母が入院した病院は、

未だにコロナ対応で面会が出来なかった。


ところが…

間もなく、その面会も解禁になると言う。


そんな折、

母の携帯から電話がかかって来た。


「なおみちゃん?…生きてるよ。…じゃね。」

『待って、待って!

 あとちょっとしたら会いに行くよ。』

「わあ…またホテルに行けるの?」

『!!!』


今年のお正月、

コロナの間、4年間会えなかった母と

都内のホテルに3泊4日で泊まった。


久しぶりの水入らず。

そのことが

よほど嬉しかったのだろう。

誤解させてしまったのだ。


母の気持ちを考えると…

胸が張り裂けそうになる。


『違う違う。

 ホテルはママの誕生日、夏にまた行こうね。』

「ホテルに行ったら美味しいもの食べられる?」

『うん、

 ママの好きなお寿司、いっぱい食べようね。』


純真無垢な母の言葉に

胸が詰まる。


『でもね、今回は違うの。

 私がママの病院に行くの。』

「そっか。病院に来るんだね。

 病院でお寿司食べられるのかな?」


何より食べることが楽しみの母。

入院してから1週間、絶食が続いている。

そして、まだ何かを食べられる状況にはない。


母はよほど食べたいのだろう。

涙が溢れて止まらなくなった。


『…そうだね、お医者さんに聞いてみようね。』

「何を食べようかね。」


言葉が出ない…。


神様、少しで良いから

何か食べられるように母をお願いします。