お腹が痛い。
何か食べるとお腹が痛い。


数日、何も食べられていないのに

腸が動かないので空腹感もない。

その日の夜には…

200人を超える世界的VIPが訪れる

大きなパーティーの司会が待っている。


有り難いことに毎年させて頂いている。


今年は特別。

お世話になっている主催者の方が

大学院の博士号を取得したお祝いもある。


穴をあけるわけに行かない。


何日も前から準備をしていたが、

パーティーの数日前に腹痛がひどくなった。


薬を飲んだが治らない。


パーティーの前日は

全ての予定をキャンセル。

家で寝ていた。


そして…

パーティーの当日。


やはり朝からお腹が痛い。

ここ数日はお粥一杯しか食べていない。

それでも、空腹感がない。


東京へ向かう飛行機。

ほぼ絶食の日々でフラフラする。


ようやくパーティーの現場に到着。

毎年、このパーティーで顔を合わせる

いつものスタッフの皆さんと挨拶をする。


フロアディレクターと

簡単な打ち合わせをする。


やっぱり

現場に来るとテンションが上がる。


そうこうするうちに…

明らかに体調に変化が見られて来た。


あれ?

お腹に力が入るようになって来た…

そんな気がした。


パーティーのリハ。


いよいよ臨場感が出て来た。

ワクワクが止まらない。


本番前。

急にお腹が空いて来た。

胃腸が正常に動き始めたのだ。


え?

何日も腹痛に悩まされ、

空腹感すらおぼえなかったのに?


控え室でお弁当を開ける。

一口ご飯を口に入れる。

飲み込む。


えーえーえー?

お腹に違和感もないし、

まだまだ食べられる!!


そりゃそうだ、

数日間で食べたのはお粥一杯。


お弁当を半分ほど平らげる。

身体中に力がみなぎる。


そして、

リハも終わり、

いよいよ本番!!

会場へ向かう。

220人の着席パーティー。

海外からのVIP。

政治家の皆さん、大学の専門家の皆さん。


今年で13回を数えるパーティー会場の扉が開き

毎年、顔を合わせる皆さんの笑顔が溢れている。


皆さんの笑顔を見るだけで、

嬉しくなって来る。


会場が暗くなる。

スポットライトが当たる。


『皆さま、本日はお忙しい中お越しくださり、

 誠に有難うございます。

 ただ今から…』


気がつけば、

パーティー開始から3時間あまり。

あっという間に楽しい時間が過ぎて行った。


パーティーが終わったスタッフ控え室。


『今年も本当にお世話になりました。

 皆さんのお陰でなんとか無事に

 司会をさせて頂きました。

 本当に有難うございました!!』


スタッフの皆さんにお礼を言う。


「あーっ!

 お腹すいたー!!」


なんと!

腹痛は吹っ飛び、

空腹感が心地良い。


すっかり体調が回復している。


やっぱり、司会は楽しい!!

1番の薬は仕事だった。