91歳。
今年の7月23日にお誕生日を迎えた母。

『コロナが怖いから、
 なおみちゃん、東京の家には帰って来ないで。』

2020年の春から
実に3年と数ヶ月。

母と会えない日々が続いた。

実家では難病を患う姉が母を守ってくれた。
母はコロナの間、
一歩も家から出なかった。

自分の身体も大変な姉が
献身的に母を支えてくれていた。

そんな状況だからこそ、
ずっと心配で…
ずっと会いたくて…
ずっと母と姉の役に立ちたかった。

しかし…
その願いは叶わなかった。

難病の姉の身体を心配して
コロナウイルスが家に入るのを
母は止めたかったのだろう。

会えない日々は
お互いに本当に辛かった。

その間に
私は会社を辞めた。
人生で最悪のことも起きた。

一番、母にそばに居て欲しい時だった。




私は身体を壊すことが多くなった。

昨日まで元気だったのに…
翌日、朝、腹痛で目が覚めたり、
咳が止まらなくなったり。

元気に目が覚める日。
それが、どんなに貴重なことで、
有り難いことなのか身にしみてわかった。

やりたいことは
自分の体力があるうちにやっておかないと…
また、いつ、体調を崩すかも分からない。




今年に入って
ようやくコロナが落ち着いた。

初夏。
3年と数ヶ月ぶりに実家に母を迎えに行った。

まだ家には入れてもらえない。

久しぶりに会う母は立っているのが精一杯。
一歩、足を踏み出すのにも
時間がかかるようになってしまった。

コロナの前は
一人で新幹線に乗って関西にやって来ていたのに。

全てを変えてしまったコロナ。

家までタクシーで迎えに行って
近くのレストランまで送って貰う。

この夏は4回も、
一緒に食事に行くことが出来た。

東京に帰る前は自分の体調に細心の注意を払う。
少しでも喉が痛かったりしたら
母に会えなくなるからだ。

今もなお、実家には入れてもらえない。

それでも、
母の笑顔に会いに行く。

母と一緒の時間を過ごすために
600キロの距離を超えて。