目に飛び込んで来る色とりどりの写真。


KYOTOGRAPHIE2023。

くろちく万蔵ビルの2階は

カラフルな色で溢れていた。


しかし、

そこには、

私たちの喉元に突きつけられた

鮮烈なメッセージが表現されている。


綺麗な写真から視線を下に向けると…

そこにはおびただしい数の

使用済みの薬の包装が散らばっていた。

「スイスは幸せそのものだ。世界幸福度調査によると、毎年、世界で最も幸せな国ランキングで5位以内に入る。それでもスイス国民の4人に1人が、人生に一度はうつ病に悩まされる。
絵はがきのような景色に囲まれて生活しているパトリック。豊かな芝生と美しくそびえる山々に囲まれている。その表情からは毎日摂取する精神安定剤や抗うつ薬の影はほとんど見受けられない。
嵐は内側にある。幸せはイメージに過ぎない。」

素晴らしい景色や環境に囲まれていながら…
心を病み、薬に頼らないと生きて行けない私たち。

「“幸せ”を定義する役割は、これまで長い間、宗教や哲学、あるいは政治が担って来ました。しかし今日、この普遍的なミッションは次第に製薬業界の手に委ねられているようです。」

そんな言葉で始まるのは、
パオロ・ウッズ & アルノー・ロベール
Happy Pills 〜幸せの薬〜と言う作品。

「鎮痛剤から抗うつ剤、アンフェタミンから
 DNAを変える薬まで。
 今日、製薬業界は宗教や哲学、政治に代わって、
 人々を幸福へと誘っている。」

写真家のパオロとジャーナリストのアルノーが
5年間、世界を旅して追求した
『幸福と薬の関係性』。

美しい景色や鍛え上げられた身体の写真。
毎日、楽しく過ごす様子が綴られたSNS。

カラフルであればあるほど…
その裏に見え隠れする
『幸せ』『なりたい自分』への渇望。

そして、
それらの理想を安易に手に入れるための
手段としての薬の数々。

幸せそうに笑う人々。

今、飲んでいる薬をバッグから出してもらうと…

笑えない量の錠剤やカプセルが並ぶ。


「アメリカのテレビで放送される薬のCMは

 問題、薬、笑顔が同じ物語で語られている。

 幸せが保証されている。」

最も幸せな国ランキングと

抗うつ剤の最多消費国との関係は…

中南米の国では

色とりどりの錠剤を露天商が売り捌いている。


「頭痛?じゃ、これ飲んで!」

簡単に売られ、安易に飲まれる薬。


様々な社会課題が、

薬と結びついている、恐ろしい世界。


そう言う私も…

今は、

薬なしでは食事をとることが出来ない。


うちの母は90歳。

毎日、飲んでいる薬の数は…ゼロである。


母の世代のような生き方は

夢のまた夢になりつつある。


ゆがんだ世界。

『薬に頼る前に

 変えなくてはならないものがある。』


カラフルな写真たちが

観る人の耳元で囁く。