『このまま帰宅すると

 腸に穴が開いちゃうこともあるんで、
 即、入院して貰います。』

早朝から続いた腹痛。

これほどまでにない痛みを覚え、

夜遅くにやって来た病院で
消化器内科の先生は優しく言った。

『憩室ってご存知ですか?
 腸に小さな部屋がある人が居るんです。
 そこに、食べたものが滞留すると
 菌が発生したりして炎症が起きるんです。
 植村さんは、今、その状態。

 憩室が炎症を起こしています。

 まあまあヒドイ感じ、良くないです。』

えーえーえーっ!!

その場で点滴を打って、
すぐに帰れると思ったから
無理して車を運転して来たのにーっ!!

『今からPCR検査と、
 肺のレントゲンを撮ります。』

あぁ、今はコロナの時代。
簡単に入院させてくれる訳ではなかった。

肺のレントゲンは、
入院前から肺炎があったのか、
入院の後、肺炎になったのか、
万が一の時のために撮るという事だった。

えーえーえーっ!

入院って、
パジャマもタオルも歯ブラシも持っていない。

尚且つ、車は駐車場だ。

『車で来ちゃったんですけど、
 入院ってことになると…』
「あー、それはかなり高額になりますね!」

そばにいた看護スタッフ全員が同時に答える。

えーえーえーっ!!

『すみません。
 一旦、車で家に戻って、
 タクシーで来ても良いですか?』
「え?車?運転出来ますか?
 まぁ…

 PCRの結果が出るには時間がかかるんで
 それまで時間はあるにはありますけど…」

ちょっと考えた。


いやぁ…
そんな高額の駐車場代は払えない。

そして…
入院に必要なものも取って来られるし。

これは…

車を置きに一旦、家に帰るしかない!!

『じゃ、
 帰りますぅ…。』


歩くだけで響くくらい
めちゃくちゃ痛いお腹をおさえながら、

病院の暗い廊下を通り駐車場に戻った。

車に乗り込む。

座って前傾姿勢になると、

少しだけ痛みが和らぐ…ような気がした。

後で知ったのだが、
知り合いの憩室炎患者の人は
大概、救急車で搬送されるらしい。
それくらい痛いのだ。

自宅になんとか戻り…
パジャマや喘息の吸入薬、歯ブラシ、コップ、化粧水、携帯の充電器などなど、我ながら激痛に喘ぐ患者とは思えないくらい冷静に、色々なものを大きなバッグに投げ込んで、タクシーを呼んで病院に戻った。

だんだん発熱もし始めたのか、
フラフラし始める…

「植村さん、
 よく無事に戻られましたね…
 PCR検査の結果も陰性でしたよ。」

などと言われた気がするが、
朦朧としていたのか記憶が危うい。

そのままエレベーターに乗せられ
病室へ直行。

痛み止めと生理食塩水の点滴を打って貰い
気を失うように寝た…らしい。
記憶が薄い。


とは言え…
どうせ入院しても
1日か2日のこと。
来週の月曜には予定があるし…

などと軽く考えていた。

ところが…
翌朝、目が覚めると!!




つづく。