職人と僕② | 清貧社長のネクタイ日和

職人と僕②

*このたびの地震により被害を受けられたみなさまにお見舞い申し上げます。

みなさまが、また笑顔で暮らせる日が一日でも早く来ることを心よりお祈り申し上げます。 

                                  シマベツヨシ アパレルマスター



なでしこJAPANの話題で持ち切りな今日。彼女らの活躍に勇気づけられた日本人も多いことだろうと思います。メンバーの皆さん、おめでとうございます。




さて、なでしこJAPANが大いに賑わっておりますが彼女らに限らずスポーツ選手(現在はアスリートという呼び名が一般的ですね)はある種の職人だと僕は思う。


自分の技術を磨きぬき実践に臨むその姿勢は僕の望む職人の姿、そのものだ。


その道を付き詰めた人だけに発することのできる美しさがあるように思うのだ。




僕も何かしらの職人と呼ばれるような人間ではいたいとは思う。



しかし、残念なことに世の中は絶えず変革を求め続け、今より明日を追求するあまり時代と共に消える事を余儀なくされる職人の技もある・・。



ミシンの手振りの刺繍屋さんなどがそうだ・・・。



手振りの刺繍屋・・・と聞くと、ピンとこない方も大勢いらっしゃるだろうが現在のようにコンピューターミシンで刺繍をするのではなく、あくまで職業用(プロなので当然だが・・・)の直線ミシンのみで人の名前(ネーム刺繍)やロゴの刺繍などをする人の事だ。



つまり、ミシンに詳しい方ならすぐにわかるのだろうが、ミシンにセットした生地を思い通りに動かすことによって、人の名前やロゴマークなどを刺繍するのだ。



僕は現在でもこの手振の職人さんと繋がりがあって、急ぎ仕事の時など結構、無理をお願いしている。



彼の仕事は見ていて飽きない・・・。


僕「社名で、前 ㈱ でカタカナとアルファベットの○○で 刺繍糸の色は○で」


職人さん「ん・・・・大きさは・・こんなもんかね?」



僕「あっ、それより気持ち小さめで・・・」



職人さん「よっしゃ。これでいこう! ブイ~ン(ミシンの音)」



大体、ネーム刺繍だけなら洋服のセットから最後の洋服のたたみまでいれて、一枚3分程度・・・。


彼の仕事で文字の間違い、刺繍のズレなど僕の知る限りでは一度もない・・・

(これは本当です。)




しかし、賢明な皆さんならお分かりだろうが彼に後継者はいない。



そして、それを希望する人もまず出てこないだろう・・・。




それは、なぜか?   理由は簡単だ、刺繍ができるコンピューターミシンに取って代わられたのだ。



30年前くらいまではコンピューターミシンもまだまだ実用的ではなくて(非常に高価だったらしくて)彼のような手振のミシン職人も大勢いたらしい。


元々、高齢な職人たちだったため、一人去り二人去り(去り・・というのか亡き・・というのかは微妙なところだが・・・)かなり数が減ったらしい。



今、彼の交友関係、仕事関係を見まわしてみても静岡にまだ何名かやっておられるらしいが岐阜市近郊では多分、いないのではないかと・・・

(実際には確認がとれておりませんので今も現役バリバリの方がいらっしゃれば何卒ご容赦ください・・・<m(__)m>)



確かにコンピューターの方が技術の習得に時間もかからず、寸分違わず同じものを仕上げられる・・・・。



その手振りミシンの大将は僕に言った「まあ、多分これも一種の進化とかじゃないかねえ。私らはその進化によって淘汰される側だと思うわ。自分らが昔、時間を掛けて覚えた仕事が無くなるのは、まあ悲しい事かもしれないけど絶滅危惧種の動物と同じで居場所が無くなれば知らん間に居なくなるわな」




職人の切なさを学んだ日となった。いやこれは職人だけに限らず僕ら全てに言えることではないかと考えさせられた日となった。



仕事とは何だろうと今でも迷う、僕がいる。



では、また。