リハビリ病院では、膝上までの装具をつけ、介助者に右足を蹴り上げてもらう方法で歩行訓練を続けていた。 自力歩行は無理で、家で訓練を続けたいのであればこの方法しかない、という説明だった。 介助者の練習も必要だということで、私は何度か夫の訓練をさせてもらった。 少しづつ慣れて上手になった。






正直に言うと、私はこの方法に疑問を感じていた。 これで夫の右足は、動くようになるのだろうか。 そもそも病院は、右足が動くことをあきらめているように感じた。そんなもやもやした気持ちのまま、夫は、右手右足が動かないまま退院した。




家でのリハビリが始まった。 まず、ベッドで、マッサージをたっぷり、30分。 それから右手右足を私が持って動かしてやる。夫の右足は、ふにゃふにゃしていて、まるで首のすわっていない赤ちゃんを抱くように、膝と足首を持ち上へ下へと動かす。これをしばらく続けると、私の手や腕がつらくなる。 次は、手すりの横に立たせてスクワット、右側は私が介助する。 とにかく少しでも長く夫を触っていよう、動かしていよう、と思った。 動く、動く、きっと動くようになる、と言いながら。 まるで宗教だな、と息子が笑った。




24時間リハビリを心掛けて2週間が経ったころ、立っていた夫の右足が横に少し動いた。本当に、動いた!暗闇に光が射した気がした。 テンションの上がった私は、リハビリ漬けの生活をしばらく続けることになる。