昭和40年代、貞子は東京都内の私立大学の文学部卒業後、北陸の女子高校に
国語教師として赴任した。
貞子は近眼なので、メガネを掛けていた。赴任3年目で学級担任になって、
女子生徒一人ずつ個人面談をし始めた。その中に沙織がいた。
貞子「沙織さんは、部活が剣道なのね。」と言って健康診断表を見る。
  「視力は0.08ですね。剣道ではメガネは外しているの?」
沙織「剣道用のメガネはあるけど、私はメガネを外しているわ」
貞子「それで、相手が見えますか?」
沙織「ぼやけてよく見えないけど、心の目があるから、空気を察して相手の
   動きを感じるの。また、集中すると見えるような気がするわ」
貞子「そうなの?。私も目が悪いから大学で弓道部に入っていたの。
   弓道は静のスポーツだし、メガネがないと的が見えないし、でも
   弓を弾く時に、弦がメガネに当たって、何度もメガネが飛んだことが
   あったわ。そう私の視力は0.06よ。5m視力検査表の3mくらい前に行かないと
   一番上の0.1の記号の空いた位置が分からないわ」
沙織「わかる。私も0.1の記号が〇にしか見えないわ」