中学校へ入学した時、1年のクラスにメガネをかけた女子生徒の好志乃がいた。
授業中になると、メガネをかけている女子生徒は数人いたが、常時メガネは好志乃
だけだった。大きくて、でものつぶらな瞳と、腫れぼったい瞼で、分厚いレンズから
強度近視のようだった。
好志乃の魅力は、近眼のつぶらな瞳とグラマーなデカ尻だった。
メガネを外した好志乃の顔を見たい男子生徒かた、「メガネを外した顔をみせて!」とせがまれても断固拒否して、決してメガネを外さなかった。だが、」そのあとで、「朝は外している」とそっと打ち明けた。
好志乃の家は通学路にあったから、或る朝早く好志乃の家の前を通ると、メガネを外して家の前を箒で掃いている好志乃を見た。至近距離に近づいているのに、好志乃は、近眼で見えないのか気づかなかった。
メガネをかけていない好志乃の素顔は、ぴんぼけ気味の顔で、ギャップが大きく、メガネをかけた好志乃の方が断然良い。
好志乃が級友にメガネを外した顔を見せない理由が解るような気がした。
好志乃は人とぶつかって、メガネが飛びそうになった時、女子生徒から
「好志乃さん、メガネが飛びそうになったわよ」と言われると憮然とした表情
をした。

時々、男子生徒から「凹レンズ」とからかわれると、好志乃も負けずに、
「ワタシは、近眼なので、今はメガネをかけなければならないが、歳を取っても
老眼鏡が要らないわよ。老眼ハダサイわよ。」と言い返す勝気な性格だった。
偶に、好志乃はひとりぼんやりとして座っている時に、メガネフレームに両手を
当てる癖があった。この時、(ワタシはこのメガネがないと見えない)近眼の身の上を再認識するようだった。
それと、座席替えになった時、好志乃が教室の一番後ろの席になった時、「目の悪い
ワタシが一番後ろの席だなんて」と不満を漏らしたことだった。この時、弱気になった好志乃を初めて見た。
また好志乃はグラマーなデカ尻が自慢のようで、廊下を雑巾がけしていると、
男子生徒から尻をたたかれることがあった。その時、好志乃は「痛い!」と言うが
怒らなかった。
好志乃はメガネ女子ながら、運動能力にも優れ、部活では、バレーボール部に所属し、スパイクは、チームの貴重な得点源になっていた。
2年になって、体位が向上すると、近視の度数も進んで、メガネレンズをより分厚いレンズに変えた。級友から「メガネを変えたのね」と言われて、フレームに手を当てた。
3年の5月に修学旅行で、宿泊先の旅館の湯上りに、女友達と連れだって部屋に帰る時、メガネを外した好志乃の姿があった。近眼で、男子生徒にみられているのも気づかないのか、膨らんできた胸を突き出すように廊下を歩いていた。
その後、10数年ごとに開催される同窓会に会う度にメガネを変えていた。