66年前、小学校6年のクラスの女子児童3人が相次いで盲腸(虫垂炎)に
罹患して手術した。
当時は殆ど開腹手術で、右下腹部を数cm切り開いて、盲腸の先端にある
虫様突起している虫垂を切除するよりほかなかった。
最初に盲腸手術したのは厚子(仮名)だった。
5月の休日に、お腹が痛くなった厚子は、医師から盲腸と診断され、
「手術しなければならない。」と言われた。
お腹を切り開いたら、盲腸が破裂していたので、快復が長引いた。手術後の痛みで
「泣いたわ。」と告白している。退院後も傷跡に絆創膏が貼ってあった。
丁度、修学旅行前だったので、楽しみにしていた修学旅行に行けなくなったのが
悔しかったらしく、卒業文集に盲腸手術の体験を書いていた。

次に盲腸手術したのは信子だった。
6月の或る日、授業中に信子(仮名)は急にお腹が痛くなり、手でお腹を押さえた。
帰宅して、医師から盲腸と診断され入院して手術することなった。
「全身麻酔で手術したのよ。お腹を15cmも切られたわ。泣かなかったわよ。」と言っていた。

その次に7月に恵子が盲腸手術をしていた。
「慢性盲腸だったわ。手術台に上がって、メガネを外されると、愈々お腹を切られるか。
と思ってドキドキしたが、看護師さんから(すぐ終わります)と言われて、気が落ち着いた。
友達が見舞いに来て、笑わせられたら、傷跡が痛くなって、手で押さえた。」と言っていた。
そして、3人で盲腸の傷跡を見せ合っていた。

このように、立て続けに女子児童が盲腸に罹ると、お腹が痛くなった女子児童がいると、
男子児童から「盲腸じゃないか?」と言われた。
その後、中学校、高校、大学でも必ず盲腸手術した女性がいたし、社会人になってからも、
どの職場にも盲腸手術を経験した女性がいて、同病相哀れむで、「お腹を切られて痛かったわ。」
と、お互いに盲腸手術体験談を語り合っていた。
温泉や公衆浴場で、盲腸の傷跡のある女性同士で、「アナタ、盲腸を切ったのね。ワタシもよ。」
と傷跡を見せ合って、盲腸手術が共通の会話になった。