刑事系科目で点数を伸ばす書き方 | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

現在,平成27年度の司法試験論文過去問解析講座の教材制作,収録を行っています。

今日は,刑法の参考答案を作成していたのですが,答案の書き方として参考になるかなと思うところがあったので,記事にしてみました。

私がどうやって参考答案を作成するのかというと,まずは自分で一通り検討した上で,出題趣旨・採点実感を読み込みます。
その上で,法セミの解説など学者の解説を読み,出題趣旨・採点実感に書かれていない筋や,自分が気になった筋について書かれていないかを確認します。
全て検討し終わった段階で,基本的にすべての筋に触れる形で,解説を書き起こします。
最後に答案を作成します。

答案作成の指針は,
○基本的に出題趣旨・採点実感に書かれていることを全て網羅すること
○複数の筋がありうる箇所では最も一般的と思われる筋(判例があればもちろん判例)に従うこと
○規範を立てる際には理由を付すこと
○できる限り多くの事実を拾って評価すること
です。

この指針に従って,まずは枚数無制限に答案を書き起こします。
今年の刑法では,約11枚でした。

そこで,枚数を減らしていくことを考えます。
減らす際には,言い回しを短くする(ex.解すべきである→解する)とか,動詞を名詞化するとかどうでもいいテクニックもあるのですが,以下の2つには特に気を配っています。

○「なお」書きで割愛できそうな箇所を探すこと
○事実ではなく,法律論を削ること

第1点でカットするのは,出題趣旨・採点実感に書かれていないことも多く,論じても若干の加点に止まるだろうという箇所です。もともと,点数があれば嬉しいなという程度で書いているので,これはバッサリと落としてしまうことが多くあります。
第2点は,予備校でよく言われることだと思います。上位答案のほとんどにおいて,事実の摘示・評価が充実していますが,一方で法律論は簡潔なものも多いです。理由づけを一切せず,規範だけというものもあります。それがいいのか悪いのかは両論あると思いますが(私は悪いと思っています),少なくとも,時間がない,書ききれないという場合に法律論をカットしていくという点に関しては,意見の一致があるでしょう。
例えば,平成27年の司法試験刑法の出題趣旨では,「本件の錯誤は,構成要件を異にするいわゆる抽象的事実の錯誤であるから,このような錯誤の場合にどのように処理するか,故意責任の本質について触れて一般論を簡潔に示した上,業務上横領罪と窃盗罪との関係を論じることになる。その際,両罪の構成要件の重なり合いがどのような基準で判断されるのかを論ずることになろう。」(下線部は筆者)と述べられており,故意責任の本質に触れないわけにはいかないけれども,簡潔に示せば足りることがわかります。
これに対して,事実はできる限り答案に盛り込むべきです。
例えば,平成27年の司法試験の刑法において,丙の罪責を検討する際に,甲のかばんの占有の有無を検討することになります。その際に指摘すべき事実は,概要以下の通りです。
・丙がかばんを持ち去ったのは,甲が待合室を出て自動券売機に向かった1分後であること
・自動券売機と待合室の出入口とは直線距離で20メートル離れていること
・待合室は四方がガラス張りであること
・待合室の出入口は1か所であること
・甲がB駅の待合室に入ってから丙が甲のかばんを持って待合室を出るまでの間,待合室を利用した者は,甲と丙のみであったこと
・自動券売機に向かって立つと待合室は見えないこと
・B駅は,通勤・通学客を中心に多数の乗客が利用する駅であること
・待合室は,B駅の始発時刻から終電時刻までの間は開放されて誰でも利用できること
・甲が待合室を出たのは,自動券売機で切符を買うためであること
これに評価を加え,整理して書くと,答案1頁分くらいスペースを使うことになりますが,それでOKです。上位答案の傾向からすれば,この部分に点数があることはほぼ確実です。

おそらく,皆さんの場合には,答案8頁フルで書ききった上にスペースが足りなくなるということはあまりないでしょうが,時間切れになりそうなときの論述内容の取捨選択の基準として参考にしてもらえるのではないかと思います。


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