【司法試験予備試験短答式試験対策】短答式試験直前期のポイント④ | 司法試験ブログ・予備試験ブログ|工藤北斗の業務日誌

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資格試験予備校アガルートアカデミーで司法試験・予備試験の講師をしている工藤北斗のブログです。司法試験・予備試験・法科大学院入試に関する情報を発信しています。時々弁理士試験・行政書士試験についても書いています。

前回に引き続き,短答式試験のうち,刑法で出題されることがある穴埋め問題のポイントを書いておきます。
(新)司法試験で出題されている穴埋め問題は簡単すぎるので,旧司法試験で出題されていた複雑な穴埋め問題を使って解説します。
なお,司法試験委員会会議の議事録を読む限り,これまでの出題方針が大きく変わることはなさそうですが,一応念のために複雑な問題の処理パターンも押さえておいた方がいいでしょう。

[旧司法試験平成20年度第42問]

 次の文章の( )内から適切なものを選び,【 】内に語句群から適切な語句を入れると,後記事例における甲に窃盗罪又は遺失物等横領罪が成立するか否かに関する記述となる。①から⑩までに入るものの組合せとして正しいものは,後記1から5までのうちどれか。
 「事例において自転車が①(a甲以外の者が所有するもの・bだれも所有していないもの)で,かつ②(a甲以外の者が占有しているもの・bだれも占有していないもの)であった場合,甲が【③】ときは,甲に【④】。これに対し,自転車が(①)で,かつ(②)であった場合でも,甲が【⑤】ときは,窃盗罪の故意がなく窃盗罪は成立しないが,構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立が認められるという見解によれば,甲に【⑥】。自転車が(①)であって,(②)ではなく⑦(a甲以外の者が占有しているもの・bだれも占有していないもの)であった場合,甲が【⑤】ときは甲に【⑥】。自転車が(①)であっても,甲が【⑧】とき,甲に【⑨】。自転車が⑩(a甲以外の者が所有するもの・bだれも所有していないもの)であった場合も,甲が【③】ときも【⑤】ときも,甲に【⑨】。」

【事 例】
甲は,公園で見付けた自転車を,以後使用し続けるつもりで自宅まで乗って帰った。

【語句群】
ア 窃盗罪が成立する
イ 遺失物等横領罪が成立する
ウ 窃盗罪も遺失物等横領罪も成立しない
エ 自転車は,だれも所有していないものであると思っていた
オ 自転車は,甲以外の者が所有しているがだれも占有していないものであると思っていた
カ 自転車は,甲以外の者が所有しかつその所有者が占有しているものであると思っていた
1.①b③エ⑨ウ   2.①a⑥イ⑧オ   3.②a⑤オ⑩b
4.③カ⑤エ⑦b   5.④ア⑦a⑧エ
[正解は3]
 

 このような複雑な穴埋め問題では,最初からカッコ内に語句が埋まっていくということは滅多にありません。
 そこで,埋まりそうなところから埋めるというのが基本戦略になります。とはいえ,本問などは虫食いだらけですので,どこから埋まるのか分からない…ということになると思います。着目すべきポイントは,問題文の中で文章として成立している(しそうな)箇所です。
本問では,「これに対し,自転車が(①)で,かつ(②)であった場合でも,甲が【⑤】ときは,窃盗罪の故意がなく窃盗罪は成立しないが,構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立が認められるという見解によれば,甲に【⑥】。」の部分です。
まず,⑥に入りそうな肢を見ると,ア・イ・ウのどれかだということはすぐに分かります。このうち,アを入れると,「
窃盗罪の故意がなく窃盗罪は成立しない」という部分に矛盾し,ウを入れると,この部分に被ってしまうことになります。したがって,⑥にはイが入ります。この段階で肢が絞れればよいのですが,2の肢に⑥イがあるだけで,他に⑥を含む肢やイを含む肢はありませんので,先に進むしかありません。
 次に,⑤が入りそうです。「甲が【⑤】ときは,窃盗罪の故意がなく窃盗罪は成立しないが,構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立が認められるという見解によれば,甲に【⑥遺失物等横領罪が成立する】。」となるので,窃盗罪の故意を欠いて窃盗罪は成立しないが,構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立が認められるという見解(法定的符合説)によれば,遺失物等横領罪が成立するような,甲の内心を考えればよいというわけです。それはオでしょう。⑤にはオが入ります。これで,⑧にオを入れている肢2,⑤にエを入れている肢4は消去できます。
 さらに,「
これに対し,自転車が(①)で,かつ(②)であった場合でも,」の部分が入ります。この部分に続けて,甲が【⑤自転車は,甲以外の者が所有しているがだれも占有していないものであると思っていた】ときは,窃盗罪の故意がなく窃盗罪は成立しないが,構成要件が実質的に重なり合う限度で故意犯の成立が認められるという見解によれば,甲に【⑥遺失物等横領罪が成立する】。」と言う文章がきますので,自転車が(①)で,かつ(②)であった場合」の部分には,窃盗罪が成立しそうな状況(かつ,法定的符合説によって遺失物等横領罪が成立する状況)が入ればよいわけです。それは,「自転車が(①甲以外の者が所有するもの)で,かつ(②甲以外の者が占有しているもの)であった場合」ですので,①にはa,②にもaが入ります。これで,肢1は消去できます。
 ここまでくると,あとは,肢3の⑩にbが入るか否かを検討するのが早いのか,肢5の
④ア⑦a⑧エのどれかが誤っている(あるいは全て正しい)ことを確認するのが早いのかという判断の問題になります。おそらく,⑩にbが入ることを確認するのは骨が折れそうなので,肢5を検証した方が早いという判断になると思います。
 
 ポイントは,まずは埋められるところから埋めていって,一定程度肢が消去できた段階で,肢から逆算して正誤を検証していくということです。
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