『刑事訴訟法教室』(大野正博他編)
☆司法試験向き度→3/5点
☆予備試験向き度→4/5点
☆法科入試向き度→4/5点
中堅刑事訴訟法学者の共著による刑事訴訟法の入門書。
「刑事訴訟法を初めて学ぶ法学部生」を「主たる読者対象として想定している」(はしがきより)。
上記のようなコンセプトで執筆されているので,例えば,巻頭に物語風の具体的な事例が設定されるなど,刑事手続きの流れが感覚的に掴めるような工夫がなされている。
一方で,最低限判例や近時の学説にも触れられている。
例えば,強制捜査と任意捜査の区別について判示した最決昭51.3.16を巡る学説の対立が短く的確にまとめられている(28~29頁)。
大部な教科書ではないことを考慮すれば,刑事訴訟法の概略を掴むための知識がコンパクトに記述されていると言ってよいだろう。
参考文献も掲げられているので,さらに発展的な学習をするための足がかりにもなる。
本格的な教科書に移行するための1冊として手に取ってみるのも良い。
なお,他に刑事訴訟法の入門書として,『入門刑事手続法(第5版)』があり,こちらもかなりオススメ。