75年前の今日、8月6日に原子爆弾が広島に落ちました。

そのたった2日後に、その町で生まれた命があったのです。

この詩を通して、皆さんと一緒に平和を願う1日にしたいと思い、

栗原貞子さんの「生ましめんかな」をご紹介させていただきます。

 

『生ましめんかな』 栗原貞子

 

こわれたビルディングの地下室の夜だった。

原子爆弾の負傷者たちは

ローソク1本ない暗い地下室を

うずめて、いっぱいだった。

生ぐさい血の匂い、死臭。

汗くさい人いきれ、うめきごえ

その中から不思議な声が聞こえて来た。

「赤ん坊が生まれる」と言うのだ。

この地獄の底のような地下室で

今、若い女が産気づいているのだ。
 

 

マッチ1本ないくらがりで

どうしたらいいのだろう

人々は自分の痛みを忘れて気づかった。

と、「私が産婆です。私が生ませましょう」

と言ったのは

さっきまでうめいていた重傷者だ。

かくてくらがりの地獄の底で

新しい生命は生まれた。

かくてあかつきを待たず産婆は血まみれのまま死んだ。

生ましめんかな

生ましめんかな

己が命捨つと

 

 

中国新聞記事

焦土の闇生まれた光 「生ましめんかな」モデル小嶋和子さん70歳