男性医師は頼りなさ気に、処置室へ移動するよう私達に言いました。
カルテに注射の名前が記してあり、それを奥さんに薬局で購入してくるよう、言いました。
私はベッドに横になり、痛みと闘っていました。
男性医師が、パンパンになった私の膀胱部分を、強い力でトントン!と叩きました。
唸りました…
痛いよ!と思わず大きな声が出ました。
様子を見ながら、最初はここは痛い?とか聞いてくれればいいのに。
すぐに注射をしました。
そのすぐ後で、奥さんが注射を買ってきてくれました。
医師に渡そうとすると、もう打ちました、と医師。
奥さんも意味がわからないまま、買って来た注射を医師に渡しました。
さあ、起きて
痛みはそのまま、頑張って起き上がりました。
座った時、膀胱と子宮が下から押されるようになりすごく辛かった…
他の飲み薬も薬局で購入し、自宅に戻りました。
激しい尿意が…
トイレに直行し、友達夫婦には娘と共にダイニングで待っててもらいました。
中から鍵は掛けないで!と奥さんが言い、ドアを少し開けたままにしました。
出ない…
尿意があるのに、全く出てきません。
泣けて来ました…
トイレに座ったまま泣きました。
尿意がゾワゾワ〜と来るものの、尿が出てこない…膀胱を中なら思い切り引っ張られるような痛み、地獄のようでした。
娘は何回も、大丈夫?と聞きに来てくれて、まだ出ないまだ出ないを繰り返し言いました。
救急車を呼ぼう
居住区外ですが、そこにも救急病院があります。
霧が凄かったので、どこに行くにしろもう少し待たないとな…とご主人が言いながらも、私の様子を見て救急車を呼ぶことに。
何度も電話してくれましたが、電話には誰も出ませんでした。
6時過ぎ
私の尿は変わらず止まったままでした。
もう病院へ直接行きましょうと、ご主人が言い、霧を心配しつつ車でもうひとつの救急病院へ向かいました。
大きな道路沿いだったからか?霧はいくらか少なくて、ご主人も車を飛ばしてくれました。
病院に到着するなり、ご主人が大きな声で職員を呼びました。
外に立っていた男性に声を掛けると、続けてご主人が
何度も電話したのに、誰も出ないじゃないか!
ここは救急病院だろ!
私のお姉さんの体調がすごく悪くなったんだ!
中に誰かいるんだろうな!
車椅子持ってこい!
早く!
と、怒鳴りました。
男性は中に聞こえるように、大声で誰かを呼んでいました。
次の瞬間、中から他の男性が飛び出してきて
私の娘が亡くなった
亡くなってしまった
と、泣き叫んでいました。
車のドアを開けたものの、まだたちあがれなかった私
そんな私を、心配そうな顔で見つめていた娘と奥さん
咄嗟に私は奥さんに、
娘と手を繋いで!
娘には、
奥さんの隣にいきなさい!
と言いました。
私が娘のことを抱きしめてあげられればよかった…
気を失う寸前?っていうのか、身体の中心部に全体力が集まっちゃって、それを発散したいのに出来ずにカラダを丸める、丸めたいのか?背中を伸ばした方がラクな気もする、そして意識が遠のくような…
そんなおかしな感じでしたので、娘を抱きしめてあげられなかったこと、辛かったです。
間も無く車椅子が来て、そこに自力で座りました。
人生初の車椅子
あとで娘が、あの時男の人が自分の子供が亡くなったと泣き叫び、次の瞬間ママが車椅子に乗って、すごく怖かった…と、話しました。
本当にごめんね
先に行った病院は、まだ出来たばかりで日本の病院のように清潔でした。
でも車椅子で入った次の病院の中は、薄暗く湿った感じで、なんだか戦時中の雰囲気?がして、少し怖かったです。
こういう雰囲気の病院、何軒か知ってるはずなのに怖かった…
看護師が居る部屋に行き、ベッドに横になりました。
医師はいなくて、事情を話し早く尿を出して欲しいと訴えました。
看護師が優しく下腹を触り(ものすごく硬くなってました)、ああこれは辛いですね、すぐに抜きましょうと言い、カテーテルを入れてくれました。
その場ですぐに膀胱の緊張が解かれました…
ベッドの横の尿を溜めるバッグを見て、看護師と奥さんが「ohh」と、低い声を出していました。
あっという間に満タンになってたそうです。
部屋の外で、ご主人と一緒に待っていた娘を呼びました。
娘は泣き顔になっていて、私がもう大丈夫だよと言うと抱きついて来て泣いてました。
友達家族宅に置いてくればよかったのに、あの時は判断が付けられなくて。
申し訳ない気持ちになりました…
医師の診断も受けたかったのですが、昼間11時過ぎにしか来ないと言われ、一度自宅に戻ることにしました。
何処から出たのか?薬の処方箋に従い、ご主人が薬局で薬を買って来てくれました。
あとで家庭教師に聞いたら(彼の本業は薬の営業マン)、抗生物質と尿が出やすくなる薬?とのことでした。
カテーテルはそのままに、バッグを自分で持ち、ひとまず帰宅することにしました。
ご主人と奥さんが、今は自宅には戻らずウチに来て、時間になったらまたあの病院行きましょう、と言ってくれました。
友達家族宅に到着したら、もう7時半過ぎでした。
子供5人のうち、2人の子供達は土曜日学校があったのに、休みにしました。
ご主人も今日は仕事休む、と話していて、私はソーリーソーリーとずっと言ってました…
ここの子供達と娘は、とても仲良しで娘もみんなの顔を見て元気が出たみたいで、早朝ながら外で遊んでました。
寝室に案内してくれて、温かいチャイとトーストオムレツを用意してくれました。
とりあえず朝食食べて
薬飲んで休んでて
薬を飲んだところで、日本に居る夫に電話をしました。
ひと通りこれまでのことを話し、ご主人と奥さんとも話してもらいました。
またあとで病院に行き、医者に診てもらわないとなんとも言えないけど…たぶん子宮が大きくなり過ぎて、尿が止まってしまったのだと思う、と伝えました。
最初、友達家族に連絡する前に[尿閉]を自分で調べていたので、だいたい想像がついてました。
娘にも電話を渡し、パパと話していいよと言いました。
安心したのか、静かにシクシクと泣いていました。
幸いにも間も無く、夫が帰国する予定です。
とりあえずあとで病院に行き、医師の診断を聞いてから色々考えよう、と夫は言いました。
いきなりそんな話を聞かされて、夫もすごく驚いたと思いますが、冷静な声を出してました…
電話を切り、いつの間にか眠っていました。
目が醒めると、奥さんがキレイ目な服に着替えていて、子供達もニコニコしながらベッドの足元に立ってました。
どうしたの?と聞くと、小さな子供達3人の成績通知の日で学校に行ってきたとのことでした。
3人共に、転校して初めてのテストでとても良い成績だったそうです。
よくがんばったわね〜と、3人と握手しました。
ベッドに起き上がり、奥さんと少し話をしてご主人と3人で、再び病院へ向かいました。
(娘は、子供達と一緒に留守番)
続く