感情と心身の繋がり
第五話​ 内臓と感情

【東洋医学・五臓編】
私たちの内臓は、単に生命維持活動をしているだけでなく、感情の器でもあると考えられています。特定の感情が過剰になったり、逆に抑圧されすぎたりすると、対応する内臓の働き(気)が乱れ、心身の不調として現れることがあります。

1.肝(かん)―「怒」
◆対応する感情
怒り、イライラ、憤り、嫉妬、不満
◆役割とバランス
★「肝」は、気の流れをスムーズにし、感情のコントロールや計画性を司る司令塔です。
★バランスが取れていると、決断力があり、のびのびと創造性を発揮できます。
★乱れると、些細なことでイライラしたり、怒りが爆発しやすくなります。逆に怒りを我慢しすぎると、気の流れが滞り、抑うつ感やため息、偏頭痛の原因にもなります。
◆身体的なサイン:目の疲れ・充血、爪のトラブル、筋肉のつり・こわばり、月経不順

2.心(しん)―「喜」
◆対応する感情:喜び、楽しみ、興奮
◆役割とバランス:
★「心」は、精神活動の中枢であり、意識や思考、睡眠をコントロールします。生命活動の原動力である「血」を全身に巡らせるポンプでもあります。
★バランスが取れていると、穏やかで愛情に満ち、健やかな精神状態を保てます。
★乱れると、「喜び」が過剰になりすぎて興奮状態が続くと、動悸や不眠、思考力の低下を招きます。逆に喜びが不足すると、無気力になったり、心の空虚感を感じやすくなります。
◆身体的なサイン:動悸、息切れ、不眠、物忘れ、手のひらの汗、顔色が赤い・または白い

3.脾(ひ)―「思」
◆対応する感情:思い悩むこと、考えすぎ、心配、共感
◆役割とバランス:
★「脾」は、飲食物を消化吸収し、エネルギー(気・血)に変えて全身に供給する、代謝の中心です。
★バランスが取れていると、健全な思考力や共感力を発揮できます。
★乱れると、一つのことをくよくよと考え続けたり、取り越し苦労が多くなります。思考がまとまらず、優柔不断になることも。
◆身体的なサイン:食欲不振、胃もたれ、下痢・軟便、むくみ、手足の冷え・だるさ、口内炎

4.肺(はい)―「悲・憂」
◆対応する感情:悲しみ、憂い、寂しさ
◆役割とバランス:
★「肺」は、呼吸によって天の気を取り込み、体内の気を巡らせる役割を持ちます。また、体の防衛機能(バリア機能)とも深く関わります。
★バランスが取れていると、前向きな気持ちで、物事の価値を見出すことができます。
★乱れると、悲しみや憂いの感情に打ちひしがれ、気力が低下します。過去の悲しみを引きずり、前へ進めなくなることも。
◆身体的なサイン:息切れ、咳、風邪をひきやすい、鼻のトラブル(鼻炎など)、皮膚の乾燥・トラブル

5.腎(じん)―「恐・驚」
◆対応する感情:恐れ、不安、恐怖、驚き
◆役割とバランス:
★「腎」は、生命エネルギーの根源である「精」を蓄える場所で、成長・発育・生殖を司ります。また、意志の力や根気とも関連します。
★バランスが取れていると、意志が強く、困難に立ち向かうことができます。
★乱れると、慢性的な不安感や恐怖心に苛まれます。驚きやすい、落ち着きがないといった状態も「腎」の乱れのサインです。
◆身体的なサイン:腰痛、足腰のだるさ、頻尿・排尿トラブル、耳鳴り、白髪・抜け毛、老化の加速
これらの関係性を知ることで、ご自身の感情がどの内臓と繋がっているのかを理解し、心と体の声に深く耳を傾けるきっかけになれば幸いです。