やっと借りてきました。楽しみにしていた、第一作の前日譚、ゼロ。


*******

『神様のカルテ 0』夏川草介
小学舘
2015年3月1日 初版第一刷発行

・有明
・彼岸過ぎまで
・神様のカルテ
・冬山記

*******




・有明

信濃大学医学部の学生寮「有明寮」での、6年生となった一止達の日々。卒業試験と国家試験に追われ、進路に悩む。恋にも悩む…。

読んでいて、自分が社会に出る前年のひりひり感がよみがえってきました。私は国家試験なんてなかったけど、やっぱり進路には悩んだし、実習は緊張したし、卒論はきつかった…。卒論出し終えたときには、一気に緊張がとけて、友達の前で泣いてしまった記憶があります。

無知な私は、医学部生も進路に悩むんだ!ってことに驚きました。自動的に研修先が決まる訳じゃないんだね。卒試も国試もあるのに進路にも悩まねばならないなんて、大変なんだなあ。

一止や友人たちの、必死に勉強して生活する姿、すごくいいなあと思いながら読みました。

『2』から出てきた辰也と、彼の奥さんとなる千夏も出てきます。『2』では、病院勤めの過酷さに追い詰められてしまっていた千夏。本作では、愛らしくまっすぐな千夏の姿がみられて、彼女のことがとても好きになりました。あんなまっすぐな気持ちが、潰されなくていい社会が必要なんだ…。



・彼岸過ぎまで
「24時間365日対応」を始めた頃の本庄病院の様子。

古狐先生が元気に活躍されていてホロリときました。

本作では、事務長のこれまで書かれなかった面がみられました。事務長と大狸先生の関係が良かったです。

医療の理想の形があり、でも医療を成り立たせるためのお金の問題があり、労働状況の問題もあり…。

これ、病院だけでなく、たくさんの人が直面していることだろうなと思います。私も前職で、そういうことで悩むことありましたし。

そこをお互い理解してやっていこうとする、大狸先生と事務長の関係は、緊張感はあるけれども、いいなあと思ったのでした。



・神様のカルテ

一止の研修医時代。なんだか泣いてしまいました。一止の緊張や必死さ、真摯さ。人が命に向き合うこと。なんだかうまく感想がまとまりません。

患者さんの、元国語教師の國枝さんの言葉。本には「正しい答え」が書いてあるわけではない。本は、また別の人生があることを教えてくれる。たくさんの人の気持ちが分かるようになる。優しい人間になれる。優しさは弱さではない。相手が何を考えているのか、考える力を「優しさ」という。

…優しい人間になりたいものです。



・冬山記

冬山に登る人々。

榛名さんの静かな強さに惹かれます。

「一人ぼっちなのは自分だけじゃない。人はみんなひとりなんだって」

「ひとりだってことは、嬉しいことも哀しいことも全部自分が引き受けるってことです。だったら毎日を大切に積み上げて、後悔しないようにしたい」

「本当に苦しいのは、自分だけが一人ぼっちだって思うことです。そうして、何もかも投げ捨ててしまうことです。そんなの、間違っていますし、悲しいですし、なにより、かっこ悪いです」