なりたい自分が振り返る | 名無しの唄

名無しの唄

鼻歌と裏声の中間ぐらいの本気

そこには自分がいる。なりたい自分がいる。
今の自分ではなかなか追いつけないような姿で、少し前を歩いている。
時折振り返ってくれたりするのだと、そんな風に感じている。

自分は自分で、歩いてはいる。
なんとなく重たい足を、でも引きずるというほどでもなく。
かといって全く苦しくないかといえば、流石にそうとまでは言えなぐらいの歩き方をしている。

時に道は形を変え、足にかかる負担や痛みも上下している。
時に、飛んでもなく辛いと感じる瞬間があったりもする。
顔を下げて足を止めてしまいそうになる、そういう時があるのだ。

そしてその時に気づく。
前を歩く、なりたい自分がこちらを見ているということに。

そいつは、怒っているような気もする
そいつは、嗤っているような気もする。
そいつは、泣いているような気がする時もある。
いずれにしてもそういう時には、寂しそうな、悲しそうな、見限ったような、諦めたような、そんな顔をしているのだ。
自分が他人の顔の中には、絶対に見たくないと思っているような顔をしていて、その理由が自分の歩みにあることを気付かせる。

なりたい自分がそこで見ている。
だから、といっていいだろう。重たくても歩いてみるのだ。