その日の夜。
帰宅すると、エントランスで先生が待っていた。
わざわざ雨に打たれながら震えていた。
その演出、いらないから。
「先生どうしたの?」
「樹里‥‥僕は悲しいよ。」
‥‥昼間のことね。
「どうぞ、入って?」
長谷川さんのことを今はどう思っているのか聞きたかったので、特別に部屋に入れることにした。
「とりあえずシャワーどうぞ。」
無言で浴室に向かう先生。
その間に着替えを用意して、コーヒーを入れた。
「樹里‥‥僕はどうしたらいいの?」
「先生、ちゃんと話してくれなきゃ、分からないよ。」
「長谷川さんと合コン行ったんだね。」
「うん、そうだよ。」
「どうして?」
「長谷川さん、最近彼氏と別れたんだって。だから新しい恋がしたいからって。」
ここで、先生は意外なことを言った。
「長谷川さんはどうでもいいんだよ。樹里はなんでそんなことしたんだよ!」
へ?
私??
あ、いや、なんて言えばいいんだろう。
急過ぎて答えられない。
「僕とずっと一緒にいてくれるって言ったよね?なのに、なんで合コンなんかしたんだよ!」
‥‥えっと
意味が分からない。
私は先生にとってどう言う立ち位置なの?
「私に彼氏ができたらダメなの?」
「当たり前だ。樹里は僕のものだ。」
「でも先生は、長谷川さんと結婚するのよね?」
「あの子はお持ち帰りされたり、元カレが10人もいるんだろ?そんなふしだらな子、いらない。」
あー
ちゃんと聞いてたんだ。
とりあえずは引き離しは成功したようだ。
長谷川さん、良かったね。
「僕は‥‥樹里さえいてくれれば、もうそれでいい。」
不覚にもキュンとしてしまう、馬鹿な私。
「樹里‥‥おいで?」
「あー、そういうのはもう無理だから。」
「なんで?僕がこんなに苦しんでるのに。」
ここでシクシク泣き出した。
こっちが泣きたいよ。
いったい私のこと何だと思ってるの?
もう、知らない!!