●バトルロワイアルの原点ともなった作品。キングは時々矛盾なんてものともしない作品を突拍子もなく書くことがあるが、これもどちらかといったらそちら寄りかもしれない。シュワちゃんの映画「バトルランナー」を見たことがある人ならその馬鹿馬鹿しさがわかるかと思うが、こちらはもう少し風刺的な意味を暗示している節がある。

 代の少年達が自ら志願して、ただひたすら「歩く」というゲーム。100人集められた男の子達は、それぞれが食料を用意し、決められた速度でどこまでも歩かされる。少しでもスピードを落としたら、即射殺。もちろん、睡眠時間や食事、排泄時間も止まってはならない。普通に考えたら「はぁ?」となって当たり前だが、そこはキング。少年達は当然の如く器用に歩きながら睡眠し、用も足すのだ。

 初は納得がいかないのだが、それさえ飲み込んでしまえばスリルはある。歩き続けなければ次々と蹴落とされていく現代社会への痛切な批判とも取れるし、そこで生まれる友情も魅せてくれる。洋書は翻訳が命だが、感情部分をあまり書こうとしないキングの作品は読んでいて少し物足りないかも。
●言わずと知れたアン嬢の輝かしい日々。木漏れ日がまぶしくて、花の匂いが甘味すぎて、全ての人々が慈愛に満ちていて・・・世界は見方ひとつでこんなにも美しく見えるんだということを、純粋に教えてくれます。

 かな表現力、愛すべきキャラクター、展開の巧さ!少女の時書いた作品だなんて思えません、きっとアンと同じくらいモンゴメリも夢見る空想家だったんでしょう。でなければこんな舌を巻くような台詞が次々思い浮かんでくるはずがありません!

 ンが見た世界と、私たちの創造する世界が共有される喜び、それが更に美しい世界へと変わる流動性、それらを一つの文章のまとまりにしたもの、それが「真の物語だ」と私が豪語する所以です。

 う全世界のマイナス思考の方々に是非読んでいただきたいです、世界はこんなにも魅力的で神秘的な愛に溢れた場所なのだということを知ることができますから。

 み終わった次の日は、確実にモノの見方がポジティブな夢見る少女に変わっているはず。「まぁ、落ち葉がダンスしているわ」なんて普通に口から出てきます(笑

 みながら所々で私はアンが「魔女の宅急便」のキキと重なって見えました。見知らぬ土地を愛し、自らの境遇を愛し、成長していくアンはいつのまにか誰からも愛される存在へと変わっていく。

「我々は、誰かを愛することによってのみ自らが愛されていることを実感できる」

 の台詞が彼女にぴったりだと思います。

 むべき人物はこの作品には登場しません。誰もがまっとうな考えを持ち、その人なりの道理に基づいて動いたり思ったりする。

 たアンに特有なのは、ものごとを想像力によって神秘的に捉えるくせはあっても、それは単に「楽観的」とは呼べないものがある、というところです。自分の過去や、自分にとってマイナスになる出来事などは、むしろ人並み以上に悲観的になる。(絶望のどんぞこに叩き落されて、ベッドから出てこなかったり)

 まり、よく言えば「感情豊か」、悪く言えば「おおげさ」な女の子なんです。まぁ確かに悲観的でも自分の信じたことは貫くし、前向きではありますけどね。

 んなところが、魔女の宅急便と似ているな、と思いました、幸せのポリアンナや小公女セーラよりもむしろ。(彼女たちはとことんプラス思考ですもんね)
●読んでいるうちに哀れで惨めで、可哀想になってくる主人公。中年男性が読むと、妙に共感してしまうのではないだろうか・・・。

 ることのない師弟関係の恋・・・主人公の先生は、恋人のいる女性を愛してしまい、権力によってどうにかこうにかこちらを振り向かせようとするけれども、結果は悪くなるばかり。遂に強硬手段でライバルを彼女の父親に遠ざけてもらうが、心には虚無感と叶わなかった恋への悲しみが残るばかり。卑怯な手を使わざるを得なかった先生の苦悩を描く。

 は女性の立場なので、彼女は明らかに先生の気持ちを分かっていながらなびくことはしなかったのだと思いますが、そこらへんを信じて疑わない先生は、作者の意図するところだったのかが気になります。
●「少女漫画の最高傑作」のひとつでもある『別冊少女コミック』掲載の漫画です。「インタビューウィズバンパイア」はこの漫画が元になっているとも言われています。大人が読む漫画かも。

 1972年から1976年にかけて連載された、吸血鬼(バンパネラ)の少年の哀しい物語。主人公のエドガーは最愛の妹メリーベルと共に、吸血鬼「ポーの一族」によって不死の体とされてしまう。

 の作品のオススメしたいところは、まずひとつめに非常に緻密なプロットの元に話が進んでいく、という所。漫画だからといって一連の時の流れを単調に追っていくのではなく、本来ならば物語の終盤にあたる部分を最初にドンと持ってくる。そこから時代を遡ったり、また戻ったりして、キャラクターの魅力を最大限に引き出しているのだ。

 つ目はイラストのうまさ。現代の私達にとって、絵は多少古くて抵抗があるものの、慣れてしまえば当時の漫画の中では最高レベルの絵の書き方だということに気付く。

 つ目は時代背景。ボーイズラブのもっと源泉の、純粋無垢な少年達のみずみずしい学園生活が、ロンドン、ドイツなど世界各地で描かれる。それぞれの土地でのそれぞれの時代を、不死の吸血鬼の目から鮮やかに描き出す。

 して四つ目は挿入される言葉の数々。マザーグースがいたるところに散りばめられ、妖しいまでの雰囲気作りに一役買っているばかりか、その唄の深い意味を知るとぞっとしてしまうような真実が隠されている。

 3巻ですが、私はもう30回以上読み返しました。永遠に私の中での一位を飾る漫画だと思います。
●「お葬式」と並んで紹介したいのが同氏作の「夏合宿」です。 こちらは夏合宿に行った先で奇妙なホラー体験をする少年の話。

 んといっても印象に残るのが、最後のシーン。怖い怖い幽霊が、最後の最後で落としてくれようとは、誰が想像していただろうか!という感じ。

 後の爽快感は、星新一氏よりもこちらのが強い気がします。スッキリホラーを味わいたい方にお勧め。
●現代の「新感覚」派ホラー小説です。

 ラーなのにどこか可笑しい、思わずニヤリとしてしまう。若い作家さんなのに、いいえ、若い作家さんだからこそあの絶妙なタイミングが作れるのかもしれません。

 編がいくつか収録されているのでちょっとした息抜きにホラーを、なんて時に最適です。ブラックユーモアが程よく効いており、次回作が楽しみになる一品。
●角川の第八回日本ホラー小説大賞長編賞受賞作。
 
 の本は、一読した直後は「何この大胆すぎるラスト!?こんなんあり得ない!っていうか持って行き方が強引すぎない?」と批判だらけだったんですが、時が経つにつれてどうしても頭から離れなくて「もう一回読みたい!」となってしまうというなんとも不思議な本です。

 学四年生の男の子が主人公。そこに絡んでくる車椅子の少年、いじめを黙認するクラス、植物占いから広がってゆく戦慄の計画が、一見爽やかに始まるストーリーを徐々にグロテスクなものに変えて行きます。

 中までは難なく読めるものの、そこから瞬く間に衝撃の展開があって、読んでいるこっちはハラハラしっぱなし。ラストは小説の常識を覆すような異常な終わり方になっています。

 度も読み返したくなる作品ナンバー1です。
●ちょっと長い純文学に挑戦したい人へ。

 親の財産でダラダラとして過ごす大助だったが、親友の働く姿、家庭を見て、自分なりの見解を崩されそうになると同時に羨ましさが募る。そのうち親友の妻に恋心を抱いてしまう大助だが、財産を管理する父親は大助に見合いを勧め、不倫の愛を認めるわけもなく・・・

「生き方」というものを考えさせられる作品でした。大助の意見はもっともだけれど、経験を伴わない机上の空論ばかり。実際堕落生活を送る私への良い教訓となりました。

 中に登場する様々な「色」。安らぎの「緑」を中心に描かれる世界は、次第に平岡の妻へのエロスを感じさせる「赤」へと変化する。

 部まで計算された極上の純文学と言えるだろう。「夜を縫うミシン」など独特の表現方法は、読者に飽きる隙を与えない。
●貴志祐介氏の久々の新刊。今回は今までとはガラッと変わり、本格推理小説だった。二時間ドラマ風で、火サス進出狙ってるんじゃないか?と思わせる展開。

 かしいつもながらに執念深い専門知識の収集と、緻密に組まれた犯罪方法は、まさに貴志氏ならではといった感じ。防犯探偵は少々キザっぽすぎる演出だったが、キャラ設定がアニメっぽいのは彼の作品の特徴だし、彼が書くとどうしてか安っぽくならない。

 らすじは、防犯探偵の男がとある会社の殺人事件と隠された秘密を暴くため「空き巣のプロ」としての知識と技術(!)を駆使していくというもの。パッと見ホームズのような洒落た行動をする主人公だが、やることがやることなだけにルパンのような印象も受ける。ラストは少し犯人側に同情してしまうところがあるが、主人公の軽妙なキャラになだめられてしまう傾向あり。

 イトルにも相変わらず深い意味が含まれており、それを探すだけでも楽しめるかも。

 後は、まさかこんな大胆なタイトルをつけるなんてなぁ、と感心した。