決戦後、母は新居となったアパートに少しずつ荷物を移しつつ、いつも以上にパートのシフトを詰め込んで忙しくしていました。
母の中では、あくまで「仮住まい」という意識を捨てたくなかったのでしょう。
忙しさを理由に、なかなか家電や家具を買い揃えようとしませんでした。
とはいえ、この頃はもうすでに12月の半ば。
これからさらに寒くなるという時期に、いつまでも無防備でいるわけにもいきません。
私と妹は無理やりガスコンロやらこたつやらを買い揃えて、母の家に運びました。
そんなこんなでバタバタしていた時です。
第3(第4?)の敵はやってきました。
そう、弟の祐介です。
母「昨日、祐介から電話があった」
私「え? 母のことを心配して?」
母「長男なのに、自分だけ知らなかったのが嫌だったって。なんで最初に相談してくれなかったんだって」
妹「は? あいつ、話し合いの時シラきったじゃん!」
私「ほんとだよ! 3年も前から知ってて何もしなかったくせに、言ったところで何してくれたっていうわけ?」
母「まあね…これからは祐介にも言うよって言った」
母からすると、やっぱり可愛い長男です。
ここまでの言動から頼りにならないことはわかっていても、本心では、祐介に一番守ってもらいたかったんじゃないかと思います。
追い打ちをかけるように、孫たちが寂しがっていてかわいそうだとか、(思ってもいないくせに)母のことはひとりにしないから大丈夫だとか、母の心をかき乱しまくりました。
ただ、これは結局自分のためだったんです。
祐介「姉ちゃんはどういうつもりなんだよ! 俺たちの土地まで奪う気か!」
妹「は? 何言ってんの?」
どうやら、私が「出て行くなら土地と建物の名義を母に変えて行け」とメールしたことをクソジジイが根に持ち、祐介に私が土地を奪おうとしていると伝え、気がつけばすべての元凶は「私」ということになっていたようでした。
町山男子共通の敵は、なんと私。
いやあ、責任転嫁も甚だしい。てゆーか、なんでそうなるのかわけわからん。
しかもどちらもそれを私には直接言ってこないという小ささです。
結局、改めて妹に状況を説明され、弟は自分の勘違いに気づいたようですが、自分の土地が安全とわかった途端、母にはまた連絡もしてこなくなりました。
ひとりにしないんじゃなかったのかよ…
母はこの間、祐介に相談しなかったことや、孫に寂しい思いをさせていることで、なぜか自分を責めていました。
本当に使えない長男。
味方のふりして自分のことしか守れないなら、せめて偽善者ぶるのやめなさいよ(呆)
この時の祐介の「ひとりにしないから」は、この後、呪いのように母につきまとうことになりました。
![]() |
いのちなみうち 小林勇輝作品集
2,160円
Amazon |