その日、私は彼(現在の夫)とともに、平日に休みをとって地元に向かいました。

父が仕事で家を空けているので、その間にブラックボックスと化していたパソコンと、登記簿・土地台帳のチェックをしようということになったのです。

妹もパソコン関係はまったくダメなので、手わけして作業する要員として、彼も「敵と呼ばれた私たち」メンバーへと昇格しました。

 

ところが、前日の夜になって、「今日、突然仕事休みになったって言い出した」と母から連絡が。

せっかくいろいろスケジュールを立てていたのに、すべてが台無しです。

 

母「とりあえず、私が登記簿を持って家を出るよ。なんか、午後から洗車したり、車の整備をしてもらいに行くって言ってるから、優子と会うつもりなんでしょチーンチーンチーン

私「滝汗じゃ、とりあえず役場集合で先に土地台帳ももらっちゃおう」

 

役場の駐車場で合流した母を見て、私は愕然としました。

母は昔からふくよかで、りんごダイエットだの酵素ダイエットだの、ありとあらゆる流行ダイエットを試しては失敗しているような人でした。

それが、つい1カ月前に会った時とはまるで別人のように瘦せこけ、パンツがゆるくなっているのが目視でわかるほどでした。

 

私の顔を見た途端気持ちが緩んだのか、母は目に涙を溜めながら、「わざわざごめんね」と、か細い声で言いました。

どうやら寝ていなすぎて、のどの調子もおかしくなっているそう。

 

「やるせない」という言葉は、たぶんああいう時の気持ちを表現しているのでしょう。

なんとなく、まともに顔が見れなかった。

 

狭い町なので、いつどこで知り合いに会うかもわかりません。

私たちは役場の誰とも目を合わせることなく淡々と土地台帳をもらい、近くの喫茶店へと移動しました。

 

母が持ってきた登記簿ともらってきた土地台帳を見る限り、どうやら借金の担保になっているような場所はなさそう。

母が把握している以上のことはなさそうでした。

 

土地の区分番号もわかったので、財産分与の際にはこれをもとに土地の評価額を計算して、請求すればいい。

ひとまず、この点については準備ができました。

 

ただ、実はうちの土地、つまり財産に関してはそもそもある問題がありました。

クソジジイの不倫が発覚する前、妹が実家の土地の一角に家を建てようと準備を進めていたのですが、それをたびたび弟が邪魔していたという騒動がありました。

その時は、例の「家族じゃない」論法で、うちの次の家長は弟であり、彼の意見が重要だから仕方ない、みたいな弾かれ方をしていましたが、よく考えたら、

 

いやいや、それ、私にも妹にも、もらう権利があるやつじゃね?

 

と超単純なことに気がついたのです。

もちろん、まずは母の生活が大事だし、母がもらえるだけもらったらいい。

でも、いくら両親が離婚するにしたって、父がもらう財産の半分をいずれ優子がもらうことになるのも納得がいかないし、あのババアにも子どもが4人もいるわけだから、そっちにも分配されていくのはおかしいでしょう。

 

すでに弟に贈与されてるものをきちんと明確にして、このタイミングで私と妹も自分の取り分をはっきりさせる。

私たちへの「生前贈与」もクソジジイに主張して、できるだけダダファミリーに流れるのを防がなければ! となったのです。