母の誕生日当日、両親は朝から実家の片付けをしていました。
実は、不倫が発覚する半年ほど前、両親は家を建て直したばかり。
私たちの生家は、いよいよ取り壊しの日が迫っていました。
この頃母を苦しめていたひとつに、「前の家(私の生家)の片付け」がありました。
片付けを進めれば進めるほど、どうしても様々な思い出が出てきます。
私たちが子供の頃の写真、旅行先で購入した数少ない思い出の品、そして今は亡き父方の祖父が母に贈った指輪も出てきました。
父と母が結婚したのは20代の前半で、当時はきっとお金がなかったのでしょう。
その指輪は、祖父が父の代わりに買ってくれた婚約指輪でした。
母「ねえ、リョウは離婚した時、婚約指輪ってどうしたの?」
私「ああ、石だけほかのアクセサリーにして、金属部分は売ったよ」
母「そっか、売れるんだねえ。もう手元に置いておく必要なくなっちゃうかもしれないんだけど、お義父さんが買ってくれたと思うと、捨てられないしさ。どうしようかなあ」
祖父は本当に素敵な人で、私が家を出て大学に通うことができたのも彼のおかげでした。
大学時代に就職活動で面接を受けていた際、「尊敬する人は?」と聞かれたら必ず「祖父です」と答えていたほど、大好きな人です。
その祖父は、生前、面倒くさい家(これについてもまた追って書きます)に嫁いだ母にとっても、大きな支えになっていました。
ただでさえ思い出の山を目の前にして、泣きながら片付けをしていた母。
祖父の指輪を発見した際にはさすがにひとりで冷静を保てなかったのか、私に電話をかけてきたのです。
「なんでこんなことになっちゃったんだろう。
なんで新居なんか建てたんだろう。
なんで私がこんな思いをしなきゃいけないんだろう」
私は、かける言葉が見つかりませんでした。
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そんな、つらいつらい家の片付け作業を、母の誕生日に、わざわざ2人でやるという。
せっかく休みなんだし、2人で日帰り温泉旅行でも行けばいいものを、当日は特に祝うそぶりもない。
おねだりしてようやく買ってもらうことになった時計が届くのは少し先になるそう。
もやもやが止まりませんでした。
母「ねえ、片付けしてたら突然『ちょっと仕事に行ってくる』って、出て行ったんだけど。わざわざシャワー浴びて」
妹「は? 今日休みじゃないの?」
私「急な仕事が入るような仕事じゃないじゃん」
母「絶対優子に会いに行ったよね
」
私と妹「まじでクソすぎるんだけど」
母「もうなんか、どうでもよくなってくるよね、ここまでくると…」
やっぱりね。
そりゃあもう、会いに行きますよね。
むしろ今までなんで気づかなかったのか? と思うほど、この頃の父の行動はあまりにわかりやすく、その脇の甘さは相当なものでした。
そして時計が届いた日、またもや母は奈落の底へと落とされました。