まだ父の不倫相手の素性がわからなかった頃、私たちは父と相手の女性とのメールのやり取りから、
「あの堅物の父がどんな女と不倫してるのか?」
と、いろいろ推測しました。
子供の頃から、私と妹は何かにつけてキレられ、特に私については事あるごとに殴られ、蹴られ、物を投げつけられて育ちました。
20代前半で母が私を妊娠し、2人は結婚しています。
2人が親になった年齢をとうに過ぎ、今ではそれがいかに大変だったか、多少は想像できます。
でも、かといって、なぜあれほどまでに父の怒りに支配されなければならなかったのか、まったくもって理解はできません。
これについてはまたおいおい詳細を書いていきたいと思いますが、とにかく、私は大学に進学して家を出るまでの父の姿しかほとんど知りません。
そのためか、いつでも不機嫌な父がどうやったら女性と親しくなれるのか、まったく想像もつきませんでした。
私たちはまず、父の職場の女性を想定していました。
還暦を前にした、孫が4人もいるクソジジイを相手にしてくれる女性となると、そこまでは若くないかもしれないけれど、40代後半、バツイチ子持ちの女性とかだろうか……なんて考えていたんです。
2人の日々のやり取りは、朝父が家を出たところから始まります。
自宅から会社に向かう間の20分程度の移動時間に電話で話していたり、時には、出社時間より2時間も前に出て行って、朝から会っていたであろう日もありました。
そして、仕事中の休憩時間、お昼休み、退社してから帰宅するまでの間と、着信は1日に何件も残っていました。
ただ、メールは送受信ともに時間が経つと消去されてしまっているため、一部しか確認できません。
その多くは、
「すきすきすきすき」
「愛してる」
と言い合ってるものや、
「今仕事が終わりました。これから帰ります」
「これから買い物に行ってきます」
といったどうでもいいリアルタイム行動報告。
それから、帰宅途中の密会に関するやり取りもありました。
「10分でも20分でもいいから会いたい」
「いつもの駐在所の裏の駐車場で」
「公園の駐車場で待ってるね」
などなど。
「高校生かな?」と思う量のやり取りとその内容に、私と妹はただただ空いた口が塞がりませんでした。
私「どんなおばさんなんだろうね……もしかして、私たちとそう年齢変わらない子だったりするのかな?」
あまりのキャピキャピぶり(実際には上記の内容に大量の絵文字つき)に、そんな想像もしていました。
ただ、そもそもイマドキ携帯メールでのやり取りだし、時々様子がおかしいメールがある。
「寝られそうとないけど、足を洗って、歯も磨いて、薬ものをで、今から寝ます(女の顔マーク)
痛み止は、12時に。
12時に起きられないでしょうから、起きたときに飲みます(女の顔マーク)
寝られそうとないけど、お休みなさい。」
なんというか、誤字脱字が多くて、変な絵文字がいろんなところに多発する。
やたら体の不調訴えている……
んんん?
これはもしや、若くないのか?
ここはあえて言わせてもらうけど、ババアなのか?
一時期流行った「おかんメール」みたいな難解さを帯びた女性のメールに、私たちは翻弄されました。
だって、100歩譲ってなんとか「浮気」で済ませようと思うなら、10歳は年下の女性が相手であってほしいじゃないですか(しつこいようですが、クソジジイはもうすぐ還暦です)。
年の変わらないババア相手に浮気するメリットなんて、還暦のジジイにないでしょう?
たとえ、自分が還暦を手前に不倫するとしたって、若い男がいいです。
まあ、これが盛大なフリになることはもう、ご想像の通りでした。
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