忙しない出勤前、いざ原付に跨らんとすいると、

大家が―昼間にかけるステレオの音量を絞ってほしい―と申す。

出勤タイムまで時間がないので、ハイハイ、とその場は応答したものの、

夜の1011時にならいざしらず、

おてんとう様が燦然と輝く時刻である。

エレキギターが咆哮するロックをガンガンに流している訳ではない。

ごくごく、個人が楽しむ限りにステレオからミュージックが流れているのだ。

確かに町家長屋の壁は薄い。隣人の生活雑音がまる聞こえ。

元々、そうした生活雑音が聞こえないように隣り合う長屋は、通りニワの台所が接する構造的工夫をすべきなのに、そうなっていない構造上の欠陥がある。

しかも、

「夜はイビキをガマンしているのだから、昼の音楽は…」

と暗に、

いや直に

―こちとら毎晩、テメエのうるせえイビキを我慢してやってんだぞ―

と、おっしゃるのは、京都人の著名なイケズ気質の何者でもあるまい。

やれやれ、京都でヨソさんは肩身が狭いのう。