写真家の並河萬里さんの言葉です
今日、我生きたり
今日、我生きたり
ほこらしげに沈む太陽を
直視しながら叫んだ青年がいた
それは戦乱の真っ只中でもなければ
どろどろした飢餓の中でもない
オアシスからオアシスへ
流砂をわたり歩く
隊商たちの言葉でもない
乾燥した中東の町や
村人たちの叫び
母なる大地からの声だったのである
生きることのむずかしい世界
中東からアジアまで歩きつづけた三十年
今、私がこうして健康な
写真家生活がおくれるのも
この一言がすべての苦闘を
洗い去ってくれたからだ
そして一日をこよなく愛し
二度と帰らぬ
その日を大切に
そして思い切った仕事に
打ち込めるようになったのである
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