美しい地球を旅するあなたへ
季節がひとつ巡る節分の日👹🫘
今日は走らず、
歩く速さで音楽に耳を澄ませてみました。
昔、音楽美学の授業で、
「ピアノは無限の可能性を秘めた楽器だ」
と先生は語っていました。
けれど当時の私は、
技術と楽器の限界に行き詰まり、
もっと歌いたいのに……
そんな思いを抱えていたのを覚えています。
モーツァルト《交響曲第36番〈リンツ〉》
の第2楽章、
そして多くのオーケストラ作品の第2楽章は、
そんな私に音色のイメージを
解き放つ力を与えてくれました。
表示はAndante(アンダンテ)
──歩くくらいの速さ。
なんと曖昧な言葉でしょう。
この時代の「歩く」が、
いったいどのくらいの速さだったのか、
正直なところ、よく分かりません。
けれどこの第2楽章を聴いていると、
そんな疑問は次第に意味を失っていきます。
急がず、立ち止まらず、
誰かと比べることもなく、
自分のペースで、一歩一歩。
モーツァルトの Andante は、
速度を指示する言葉というより、
生き方の姿勢のようにも感じられます。
歩く速さは人それぞれ、
だからこの楽章は聴く人の呼吸に
そっと寄り添ってくれます
この楽章を聴いていると、
まるでオペラのアリアのように
旋律が自然に息づき、
音楽の情景が広がっていきます。
意識の中で「歌える」ようになると、
不思議なことに、
楽器もまた歌い始める。
モーツァルト27歳。
寿命を思えば、
すでに円熟期とも言える年齢です。
落ち着きと気品に満ちたこの第2楽章は、
聴くほどに力が抜け、
心を澄んだ世界へと誘ってくれます。
技巧を超えたところで、
音楽はもう一度「歌」に還る。
そんなことを、
モーツァルトは静かに教えてくれる気がします。

