1905年― 帝政ロシアの時代、アナテフカという寒村で酪農業を営むお人好しで働き者のテヴィエ(市村正親)は、信心深くて、楽天家で、25年連れ添っている妻のゴールデ(鳳 蘭)には頭が上がらないが、5人の娘たちを可愛がり、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。
長女のツァイテル(美弥るりか)、次女のホーデル(唯月ふうか)、三女のチャヴァ(大森未来衣)ら年頃の娘たちの今の最大の関心事は、自分たちの結婚について。今日も村に住む世話焼きのイエンテが、ツァイテルに縁談を持ってきている。娘たちは気もそぞろ。娘たちにとっても、姉さんが早く結婚を決めてくれないと、自分たちに順番が回ってこないからだ。だが一方、ユダヤの厳格な戒律と“しきたり”に倣い、両親の祝福が無ければ結婚は許されない。
そんなある日、金持ちで肉屋のラザール(今井清隆)からツァイテルを後妻に迎えたいと申し出を受けたテヴィエは、酔った勢いでついつい結婚に同意してしまう。長女の結婚相手が見つかったことで妻のゴールデも大いに喜んだが、当のツァイテル本人には仕立屋のモーテル(上口耕平)という相思相愛の存在があった。ツァイテルとモーテルの熱意に心を動かされたテヴィエは、ついに若い二人の結婚に同意する。が、結婚の許しを同時に二つも出してしまったテヴィエ、ゴールデやラザールに何と切り出せば良いのやら…。
さらには、次女ホーデルは革命を志す学生のパーチック(内藤大希)を追ってシベリアへ旅立ち、三女のチャヴァはロシア人学生のフョートカ(神田恭兵)と結婚したいと言い出し駆け落ち同然で家を飛び出す始末。そしてテヴィエ一家にも、革命の足音と共に、故郷を追われる日が刻々と迫っていたのだ―。
明治座のHPより
アナテフカという寒村は、今のウクライナの架空の村らしいですが、舞台に登場する地名は、キエフとか、シカゴとかシベリア、ワルシャワとか実際にある地名が使われているので、頭の中で場所が想像出来て、ユダヤ人って、本当に流浪の民なんだなと思わさせられます。
ロシアに近い村なのでしょうか。ロシアの警察官が常駐していて、ついには、立ち退きを迫られてしまいます。
この警察官は、ロシア人とはいえ、古くからテヴィエたちと暮らしているために、取り締まるのが辛そうですが、上の命令には従わなくちゃいけないという。そうは言ってもユダヤ人には、なれないという本音も出て気持ちの複雑さが出ています。
舞台の初めから”しきたり”という言葉が出て来て、夫が仕事をして家族を養い
妻が裁縫、料理などの家事をして家を守る。
父親が娘の結婚相手を決める。その相手は仲人が釣り合いの良さそうな二人を見つけ
話を持って行くというもの。
日本には、そういうしきたりというものがあったのかどうかはともかく昭和以前は
お見合いも多く恋愛結婚なんて中々なかったのかもしれない。
だいたい、女性みんなが進学する時代でなかった頃は、女学校を出たら、花嫁修業をして結婚をするって感じだったのかもしれない。
そのため、仲人がいなくても男性は女性の家に結婚の挨拶をしに行って父親が承諾をしたら結婚という話になったのではないのだろうか。
そして両親の頃は、結婚しても仲人さんのところには、挨拶に行っていたような気がする。
そんな様子を見ていたから、自分たちが頼まれ仲人をした時も夫の部下でも正月とかに挨拶に来られたら嫌だなあと思っていたが、10組くらいやった中で、両家の顔合わせで我が家を使ったのは、一件だけ。あとは、外で会ったり、夫が一人で二人と会ったりしたようでした。そして年賀状やお歳暮のおつきあいがそこそこ。
圧倒的に多いのは結婚式だけというくらいだった。
そして今の時代は仲人さんなんて立てるのかしら。私たちが仲人を引き受けた時はお嫁さんの手を引くのも仲人の妻と決まっていて、結構式当日も中々忙しかったけれど、今は誰か指名してやってもらうような感じですよね。
つまりは、昭和の頃は、この舞台のように結婚も堅苦しいものだったような気がする。
とはいえ、このテヴィエの家も長女が恋愛結婚をしたいと言う事で、仕立て屋のモーテルが頑張って働いて長女さんを幸せにしますからと父親に頼みこんで結婚にこぎつける。
仲人さんが持ってきた話は、あらすじで書きましたが肉屋のラザール
金持ちだけれど、父親より年上という男性。
これが決まると妹たちもこういう感じで結婚していく感じだったし、世間はそういう感じだったのでしょうね。
結婚式のシーンでサンライズサンセットが歌われるのだけれど、ちょっと大人しめの曲から勝手にせつない歌かと思っていた。
しかし、厳粛な式で、小さな子が大きくなって美しく育ちこの日を迎える
日が昇り、沈んでいくが毎日幸せが続きますようにというような歌で
ユダヤの人たちは、みんなで花嫁と花婿の幸せを願っているのだなと思った。
ユダヤ教の服装に身を固め、まあ二階席なので、詳しくは見えないが
男性は特徴的な帽子をかぶり、ちょっと長めのコートを着ている。
二人が誓いを終えると
ワイングラスを布で包み、新郎が足で割る。
男性たちはダンスが上手で頭にボトルを乗せて一列に並んで踊ります。
さりげなく踊っているので、初めは気がつかなかったのですが、途中から気がついて
何か特別な仕様になっているのかとボトルを下ろすまで目が離せなかったです。
これだけじゃなくて男性の皆さんはコサックダンスのようなダンスもとても上手です。
あと、テヴィエの娘たちは、みんな歌が上手です。
長女のツァイテルとモーテルは、幸せに暮らしていて、モーテルもお仕事を頑張っているようで良かった良かったという感じだったのですが、
次女のホーデルも姉の結婚を見ている訳ですから革命を志す学生のパーチックと結婚をすると言い出します。
親は辛いですよね。パーチクは、モーテルよりも貧乏そうです。食べるものにも困っていて、テヴィエ家の娘たちの家庭教師をすることで食べさせて貰っていたくらいですから。
このアナテフカの村全体を警備しているのは、ロシア人の巡査。ロシア兵が結婚式もあらしに来ていました。
ロシアに近いところにあるのでしょうか。そのロシアに目をつけられたパーチクは、シベリアに送られてしまい、ホーデルは、彼のそばにいたいと言って家を離れてしまいます。
そして三女もチャヴァもロシア人の学生と親に断りもせずロシア正教会で結婚式をあげてしまいます。
もう三女よお前もかって感じですよね。
で、テヴィエと妻のゴールデは、自分たちの結婚を振り返ります。
結婚式まであったこともなかった二人は、初めて気持ちを確かめ合います。
5人の娘がいたテヴィエ家も下二人を残すのみ。
ただでさえ寂しい家族の前に
村人の前であの巡査がユダヤ人は三日で家を空けろ
今から家を売って荷造りをしろと宣言します。
この観劇をした日は、3.11でした。
突然、家をなくした人たちと重なりました。また大船渡は山火事もあって
二度家を追われた人もいると聞いたばかりです。
自分の意思ではなく家を追われることの辛さに胸が締め付けられました。
ユダヤ人のテヴィエは、神様どうして私たちはこんな目にあうのでしょうと
空にむかって問いかけます。
キリスト教の幼稚園でしたが、感謝のお祈りはしたものの、お願いはほとんどしたことがないので、神様と空を見上げなければならないユダヤ教は、大変だなあと思いました。
家の整理をしていると長女夫婦が挨拶に来ます。三女夫婦もお別れだけは言いたかったと会いに来ます。
下二人は、アメリカに行くためには、船に乗るの?なんて無邪気にふるまっています。
手押し車に乗るだけの荷物を家族でテヴィエが引き、女性たちが押して遠い門出に出て行きます。
感動して思いっきり手を叩きました。隣の女性たちは、あんなに大笑いをして観ていたのに、なんか躊躇した感じです。
たしか4度もカーテンコールをしてくれました。
3度目には、ピユーと口笛を吹いて感動を伝えた人がいたので、市村さんがお返しをしようと口笛を吹くふりをしました。最後は、お隣の女性たちがスタンディングオベーション。これは早かった。私も老骨に鞭打ってスタンディングオベーション
ラザールさんが二階席にむかって手を振ってくれましたので、嬉しかったです。
みんなで手をふりました。
主観ばかりの感想ですが、大変面白かったです。