原題:The Unlikely Pilgrimage of Harold Fry
原作:「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅 レイチェル・ジョイス
解説
イギリスの作家レイチェル・ジョイスによる小説「ハロルド・フライの思いもよらない巡礼の旅」を、「アイリス」のオスカー俳優ジム・ブロードベント主演で映画化。
定年退職し妻モーリーンと平穏な日々を過ごしていたハロルド・フライのもとに、北の果てから思いがけない手紙が届く。差出人はかつてビール工場で一緒に働いていた同僚クイーニーで、ホスピスに入院中の彼女の命はもうすぐ尽きるという。近所のポストから返事を出そうと家を出るハロルドだったが、途中で考えを変え、800キロ離れた場所にいるクイーニーのもとを目指してそのまま手ぶらで歩き始める。ハロルドには、クイーニーにどうしても会って伝えたい、ある思いがあった。
映画.comより
二つの理由で観ようと思いました。
一つは、昨年に続きお孫ちゃんがホームステイをイギリスでするらしいとのこと。
昨年やっとロスの辺りが解るように勉強したと思ったら、今度はイギリス。
さっぱり解りません。
この映画で南のキングスブリッジから北部のベリック・アポン・ツイードまで歩くというので、その景色を見てやろうと思いました。
もう一つは、普段からよく歩かされている私。7000歩から10000歩近くくらいが目標のようですが、やっと4㌔から6㌔弱 月に10万歩として1年以上かかってしまう。
男の人は違うのだろうな。夫にしても、一日に1万歩は普通に歩けるらしいし、昨日も高尾山、今日は昭和記念公園と出かけている。体力の違いを感じてしまう。
この主人公、最初の頃、一日に14㌔歩いたとか2,3か月あれば歩けてしまうのか、靴擦れは?どんな道?と思った次第です。
ハロルドは、郊外のおだやかなベッドタウンのようなところに住んでいて、
工場で同僚だった女性から、ホスピスにいるというお別れの手紙が来た。
すぐに手紙を書いたものの、そっけない内容だ。なんとかもっといい手紙が書けないものかと妻にお願いするものの断られてしまう。
うちでもありそう。
しかたなくポストまで出しに行くのだが、語りつくしていない手紙のせいか郵便局で出そうか、もう少し近いポストで出そうかとやっているうちに家に帰りそびれて寄ったところで青い髪の女性に背中を押されるようにして、クイーニーに会いに行くことにする。それをホスピスに電話で伝えて歩き始めるのだが、ほぼまっすぐに北に向かって道が伸びているらしいのだが、坂があったり、交通が激しかったり、田舎道だったりと気が気でない。
どうみても70過ぎのおじいちゃんを歩かせないでよと思って原作を見たら、65歳とのこと。しかし、帰ってから調べたら、この俳優さんは70過ぎ。歩く場面が多くてとても他人事ではありませんでした。
家の駐車場までしか歩いたことがなかった人だというのもそうだろうなと言う感じの人で、どうやって日々過ごすのだろうと心配だらけ。
黙って出かけた奥さんにも電話をするのだけれど、心配が過ぎて、奥さんの行動も空回り過ぎ。
自分だけでどうにかしないで、誰かに頼ってよと思っても、身寄りがない?息子の話が出てくるのだけれど、ちっとも連絡しない。近所の人にも嘘をついてしまう。
歩く旦那さんも心配だけれど、だんだん家から遠ざかって行く夫をどうにも出来ない妻の方も心配。ただ単なるロードムービィではなくて、これからの生い先を考えさせられてしまう映画でした。
ネタバレ
彼らには、ディビットという息子がいたのですが、最初の方に過去形で語られるので、亡くなっているのが解ります。もう原題で解ってしまうかと思うのですが、彼が長い距離を歩き続けるのは、同僚だった女性に生きる力を与えたいという気持ちだけでなく息子への贖罪と思われます。
同僚については、そこまでしたいと思うのかというのがずっと気になるところです。ハロルドが何㌔か進めば、それだけ彼女に近づくけれど、妻のところからはそれだけ遠ざかるという気持ちの距離も気になるところです。
ホスピスの対応と素直になれない妻の気持ち。映画を観ながら、車で追いかけたらと何度も思ったものです。野垂れ死んでしまうのではないか。気になって普通ではいられないのじゃないかとか。
彼女の気持ちがギリギリになった頃にハロルドの立ち寄り先で撮られた写真がテレビで話題になります。
元気そうなハロルドにホッとするものの、彼女の気持ちはどんなに変化するのでしょうね。
これが報道される前なのですが、身軽でいたいとハロルドは、お財布をはじめ身元が解るようなものまで家に送り届けるのです。この時の妻の気持ちってどうなのでしょう。
ロードムービィって景色と出会う人だけじゃ、ドキドキはしてもあまりハラハラしないですが、どこで夜を過ごしているのだろう。何を食べているのだろうが、この荷物を送り返したところから加速されます。
あまり若い人には、この心細さは伝わらないかもしれませんが、気になる方はどうぞご覧になってくださいね。