解説

「アメリカン・ビューティー」「1917 命をかけた伝令」の名匠サム・メンデスが、「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマンを主演に迎えて描いたヒューマンドラマ。

厳しい不況と社会不安に揺れる1980年代初頭のイギリス。海辺の町マーゲイトで地元の人々に愛されている映画館・エンパイア劇場で働くヒラリーは、つらい過去のせいで心に闇を抱えていた。そんな彼女の前に、夢を諦めて映画館で働くことを決めた青年スティーヴンが現れる。過酷な現実に道を阻まれてきた彼らは、職場の仲間たちの優しさに守られながら、少しずつ心を通わせていく。前向きに生きるスティーヴンとの交流を通して、生きる希望を見いだしていくヒラリーだったが……。

「ブルー・ストーリー」のマイケル・ウォードがスティーヴンを演じ、「英国王のスピーチ」のコリン・ファース、「裏切りのサーカス」のトビー・ジョーンズが共演。撮影は「1917 命をかけた伝令」でもサム・メンデスとタッグを組んだロジャー・ディーキンス。

2022年製作/115分/PG12/イギリス・アメリカ合作
原題:Empire of Light

 

皆さんのレビューを見て、とにかく劇場がすばらしいのと、オリビア・コールマンはに覚悟しなくちゃいけないのかとコリン・ファースがやばい人らしいなんて情報に、どんな心構えで観なくちゃいけないのか、でも素晴らしい劇場は見ておかなくちゃと思って観に行きました。(とらえ方がおかしいと批判されそうですが)

 

イギリスの静かな海辺の町・マーゲイトに存在する元映画館“Dreamland”に手を加えてエンパイアを作り上げたそうですが、建物が残っているのは、嬉しいですね。

 

私が知っている大きな映画館と言えば、

格式がある劇場だったような気がします。

有楽町の日劇

歌舞伎町にあったミラノ座 映画だけでなく子供向けのミュージカルをよく観に行きましたが、同じ建物だったのでしょうか?

東急文化会館、上の方に何館か映画館があるので、一階に並んでいる人たちは何階の映画で並んでいるのだろうと思った記憶があります。

ちなみに私は、屋上にあるプラネタリウムを一年のうちに何回も行きました。

 

東京以外の映画館は藤沢駅近くの映画館しか知りませんが、近所のおばちゃんに連れられて、観に行った記憶があります。小学生の子供たちが「ブルーハワイ」「フランキー&ジョニー」などを観ていました。

 

チケット売り場は、当初こそ、ああいう形だったかもしれませんが、徐々に

遊園地にあるようなカウンター式になったのではないでしょうか。とにかく映画というものは並ぶもの、時には、今時信じられないでしょうが、立ち見もあって、ぎゅうぎゅうでしたね。「101わんちゃん大行進」の時も長くならんでいて、列の行く手にグッズが並んでいて、欲しくなったのを覚えています。

 

今でも、もぎりの人は、ただチケットを見せるだけになっているようですが。

 

とにかく劇場は堪能いたしました。記憶をよみがえらせてくれて、それに付属した思い出も出て来て、嬉しかったです。

 

 

 

映画の内容からは離れてしまいましたが、景色がきれいな映画っていいですね。

イギリス、マーゲイトにある映画館は海に面していて、海の先には、フランスがある辺り。

ヒラリーとスティーヴンがバルコニーから眺める景色も海が見えて美しいのですが、

仲の良さそうなご夫婦が何度か見つけることが出来て、ほのぼのします。

 

ストーリーとしては、なぜか映画スタッフの要のようなヒラリーが上司からセクハラを受けている。何故断れないのか、彼女が強くなれない理由がしだいに明らかになる。

やがてスティーヴンという青年がスタッフとして入って来ます。

大学に行きたいのに、黒人という壁のため行かれない。彼女からも見放されている青年とヒラリーは徐々に心が通じて行きます。

細かなエピソードの一つ、一つが心に響きます。それを通じて、気持ちが寄り添っていくので、歳の差はありますが、心の奥で繋がっていく感じに無理がないです。

 

1981年1月18日、ニュークロスでのハウスパーティー中に、多くの黒人の若者が火災で死亡しました。4月には、ブリクストンで警察が十分に調査していないとする抗議者との間で暴動がありました。

そんな事件があってから、黒人のスティヴンスは、パーティに行っても居心地が悪かったので、映画館に戻って来て、映画館の屋上にやって来ます。彼の家は、その屋上から見えるアパートであり、母親と二人で住んでいるとのこと。だんだんに身の上も語るようになっていきます。

 

ヒラリーは、劇場内の施設をスティーブンに案内した時に、怪我をした鳩を見つけ二人で介抱します。

”time to say good-bye"とスティーブンが言って鳩を外に向かって解放した時に

二人の間にも変化が訪れます。

特にヒラリーは、どんどん元気になって生き生きしていきます。

 

劇場では、”炎のランナー”のプレミア上映が行われることになり支配人のエリスは、

それに備えて劇場をきれいにしようとします。

ゲストも来ることだし、映画の好きなスタッフたちは、盛り上がりますよね。

聞いているこっちだって、想像するだけでワクワクします。

 

それと同時にスティーヴンは、映写技師ノーマンがスティーヴンにフィルム運びから、映写の技術まで教え助手として手伝わせ始めます。

映写室は、中々入れるものではないので、ワクワクします。

ノーマンは、部屋のいたるところに俳優の写真を飾ってあって、きっとそれを見るたびに映画の場面が思い出されるのでしょうね。

実は、私の部屋も映画のチラシが数多く貼ってあって、最近多くなりすぎたので、少し減らそうかと思っていたところですが、この部屋を見たら、やっぱりもう少し飾っておくことにしました。

 

映写機から小窓までの間の小さな光の通り道、これがこの窓を通って大きなスクリーンまで到達するのですよね。

 

今は映画を観に行ってもこの光のすじは見られませんが、この光の中にどれだけの色が入っているのだろうか、とても不思議ですよね。

しかも、リールの取り換えもさせてくれます。

取り換え時には、フイルムにサインが現れると言います。アレです。アレだったのです。あのサインで次のリールになり、この時の映画は、3巻目のリールも用意するようでした。

こういう細かい描写いいですよね。

 

この後、ヒラリーは、うつが再発、後半へと向かいます。

プレミア上映の時に、ヒラリーはドレスを着て現れ、頼まれてもいないのに登壇します。スピーチをする彼女の口元から見える彼女の歯は、口紅で赤く染まっています。

つけ慣れていない口紅をしたせいでしょうか。背中のホックも止まっていません。

これも着慣れていないのでしょうね。それでも彼女は、スピーチをしたかったのです。

そのまま、ヒラリーは家に帰ってしまいますが、大音量でレコードを掛けていたためとご近所に迷惑をかけたことなどで、精神的に破綻したとみられ、カウンセラーと警察官が家に来ます。

開けなさいとドアを叩く音、ドーン、ドーンとすぐに開かないところが余計に緊張がまします。こういうの上手いと思います。

警官のドラマだと簡単にドアがぶち明けられますが、開けられる方の気持ちが感じられて、効果的だと思います。

 

とにかく細かい描き方で、観ている方の気持ちに優しいように感じます。

 

この後にもまだドラマが待っています。2時間ない映画でこれだけの事を

描いてくれてうれしいです。