「最後の決闘裁判」
エリック・ジェイガー原作をリドリー・スコットが監督、マット・デイモンとベン・アフレックに女性目線のニコール・ホロフセナーよる脚本を映画化。三者三様の見方の違いを描いて、その上、600年前と現代、変わらなくちゃいけないものも描きだす。
1386年、百年戦争さなかの中世フランスを舞台に、実際に執り行われたフランス史上最後の「決闘裁判」を基にした物語。騎士カルージュの妻マルグリットが、夫の旧友ル・グリに乱暴されたと訴えるが、目撃者もおらず、ル・グリは無実を主張。真実の行方は、ジャン・カルージュ(マット・デイモン)とジャック・ル・グリ(アダム・ドライバー)による生死を懸けた「決闘裁判」に委ねられる。勝者は正義と栄光を手に入れ、敗者は罪人として死罪になる。そして、もし夫が負ければ、マルグリットも偽証の罪で火あぶりの刑を受けることになる。(eiga.com参考)

キリスト教ではないので、証拠のない裁判を神に裁いて貰うと言うやり方で決着をつけるのが大丈夫なんだろうかとハラハラする。
真実が勝つなんて信じちゃいないが、キリストを信じる人達は、神に審判を委ねてよしとしていたのか。
いや冷静に考えれば。
当のマルグリットでさえ、夫を責める。彼女は真実を訴えたかったが、火炙りの覚悟はなかったようだ。マルグリット(ジョディ・カマー)のような凛とした女性でも、この決闘シーンは、きつすぎる。ル・グリに至っては、教会に行った事で、罪が赦されたと言い張る。



この映画で三者三様の真実がかたられるが、それぞれが自分目線であるから、少しづつづれがある。

ジャンは、真面目に国王に仕え領地を守り代々受け継がれてきた長官職を得る事を生き甲斐にしている。マルグリットとの結婚も家の存続を考えている昔かたぎな男なのだ。

ジャック・ル・グリは、自分の持てる才能を全て使って、領主のピエールに認められ、存在を大きくしていく。ジャンが目標としていた長官職さえ手に入れてしまう。
マルグリットが美貌だけでなく佐一にも長けていると知り、段々に自分にふさわしいと思うようになる。

マルグリットは、ジャンと結婚し留守宅の采配をしているが、ジャンが度々、ジャック・ル・グリと問題を起こすので、何とか仲良くして貰いたいと思っているところに起きた事件、心穏やかではない。

そして、この三人以外もしたたかな人達がいる。ジャン・ド・カルージュの母もちょっと怪しい。もっととんでもないのが、領主のピエール。髪が金髪だったので、最初は解らなかったが、憎たらしい役をやらせたらピカ一のベン・アフレック。
ル・グリの部分の脚本が、アフレックと言うことで、憎たらしいのに磨きがかかっている。

裁判シーンは今も昔も、証言台に立つ人に厳しい。
この映画を観ながら、600年前の家の有り様をまだ続けて行こうとしている人達がいる一方、しなやかに時代に乗っていく人もいるとちょっと思った。
長くなりすぎたが、なかなか面白い映画だった。