【球界ここだけの話(1316)】殊勲打のロッテ・アジャ井上はなぜ頭を抱えた? | 浜のおじさん&週末はオリックス親父( ̄∀ ̄)のブログ
 試合前には最大18メートル、試合中も13メートル。その日もZOZOマリン特有の強風が吹いていた。
 27日のロッテ-楽天戦。一回二死一、三塁で井上は「風は左翼方向から吹いてくるから、内角を攻めてくるはず。それなら」と意図的に腕をたたみ左翼方向に高い球を打ち上げた。普通ならレフトフライで3アウト、チェンジ。しかし…風である。ふらふらと定まらない球を左翼手の島内は逃し2点適時打。本拠地の利を生かした戦略だ。
 試合後、記者に囲まれた井上はうれしそうだったが某スポーツ紙の記者の問いかけで悩みの境地? に陥ってしまった。
 「ドカベン、読んだことあります? 通天閣打法って?」
 言わずと知れた、このほど長期連載を終えた超人気漫画。登場人物の「坂田三吉」が100メートル以上の高さに打ち上げ、落球を誘うという“妙技”が通天閣打法である。
 何十年も手法が変わらないのは恥ずかしいところでもあるが、スポーツ紙はとかくキャッチーな見出しをほしがる。「○○打法」「▲▲投法」や、「ゴジラ」「大魔神」「ハンカチ王子」など定着した愛称もある。
 だが井上は「通天閣打法」に頭を抱えてしまった。「あれは大阪のものですからね。千葉に高い建物ないですかね?」。
 その場にいた記者も参戦する。
 「千葉ポートタワーはどう?」
 「なんか知名度がイマイチかな」
 「調べたら××ホテルが一番高いらしいよ」
 「宣伝みたいだなぁ」
 「あのレジャー施設は?」
 「名前使うと権利関係が面倒かな」
 千葉県には意外に象徴的な高い建造物が見たらないのだ。 試合後の他愛のないやりとりの一幕だが、井上は今季キャリアハイを次々と更新、初めて本塁打も2桁に乗った。まさに覚醒のシーズンを迎えている。チームの日本選手では2013年の井口(現監督)以来、20本打った選手は出ていない。その井口監督は「(井上)晴哉の力なら普通に打てて当たり前。彼には未知の世界だけど自分のスイングができている」と実現可能だとみている。本人は「謙虚に」という言葉を繰り返す。
 かつて、小林雅英(現投手コーチ)には「幕張の防波堤」なる愛称があった。井上が20本塁打、いや30本塁打に達したら何か考えないといけない。(芳賀宏)