O side



翔君に渡された免許証を見ると男の名前は神崎徹。
年齢は27歳。社員証なんかも探して見たら大手企業で働いていた。
こんな事して馬鹿なヤツ・・・いい大学も出てるだろうに、お前の母ちゃん悲しむぞ!
でも、松潤を辛い目にあわせたんだから許さねぇけどな。

男だけならオイラが担いで連れて行けたんだけど、さすがに車まではどうにも出来なくて母ちゃんに来て貰って男の家まで運転して貰い、松潤を送り届けた翔君とも合流して、今は男の部屋にいる。

翔君はさっきから男のパソコンをいじったりスマホを操作して忙しそうだ。

「この男、潤君ファンのおばちゃんネットワークで確認したら確かに最近潤君を見張ってたみたいよ!
もう、谷口さんの連絡ミスで私に情報回ってくるのが遅くなったんだから、文句言っておいたわ!
それから、さっき車の中を漁ってみたらこんな物が入ってたわよ」

母ちゃんがさり気に谷口さんをディスりながら男の物と思われるスポーツバッグから中身をばら蒔いた。

「スタンガン、アイマスク、ビデオカメラに手錠、ロープ、あとはあんた達子供には言えない物もごっそり。
こいつ本物の変態よ!潤君が無事で本当に良かったわ!」

母ちゃんがまだ気絶している男を憎々しげに睨む。

「こいつ、潤だけじゃないみたい。
パソコンの中やスマホの中にもそういった動画が沢山入ってる。被害にあった子は沢山いるみたいだ。」

翔君がパソコンをカタカタさせながら言う。

「どうする、こいつ。こんだけ証拠も揃ってるし警察に突き出せるけど、被害者として潤が晒されるのが俺は嫌だ。潤もそれは望んでいない。
それに、警察に突き出して終わりなんていう生っちょろいやり方じゃあ納得いかねぇ」

今度は翔君が男を殺しそうな眼力で睨みつける。

「・・・翔君・・・おやめなさい。
イケメンが過ぎるわよ」

母ちゃん、こんな時に翔君にゾクゾクしてんじゃねぇよ!

「確かにそうね。でもここからは大人の領域。子供が手出しするもんじゃないわ。私に任せなさい。
翔君、そのデータ全て削除していいわよ。」

「OK。復元出来ないように余計なウィルスも仕込んどくよ」

「さすがね、ありがとう。
智、男の社員証、免許証、保険証、マイナンバーカードもあれば全部写真撮ってお爺様に送って。それから後片付も頼んどいて」

「じいちゃん使うんかよ!」

「いいのよ。こんなヤツには天誅を与えなきゃ。
でも、お父さんにはくれぐれも内緒だからね?
さてと・・・そろそろ目覚めて貰おうかしら。
翔君、そいつ殴って起こしていいわよ?」

母ちゃんが男の前に椅子を移動させて座り、
翔君に指示を出す。

翔君はずっと堪えていたんだろう、松潤をあんな目に合わせた怒りを拳にこめて5~6発男を殴って起こした。
・・・あ、普通に殴ってる・・・ 
それに、そんな殴るとまた気絶しちゃうじゃん!って思ったけど、そしたら今度はオイラが殴って起こしてやる。
松潤を傷つけた罪は重いんだ!


「うぅ・・・っ」

「起きぃやぁ!」

「・・・え?」

意識を取り戻した神崎に母ちゃんがドスを聞かせ、
それを聞いた翔君が驚いている。

「ってぇな、何すんだよ」

「何がや?」

「ババア、お前誰だよ?」

「わてや!」

・・・母ちゃん、完全に極妻スイッチ入っちゃってんじゃん・・・岩下志麻になりきってんじゃん・・・


「あんた、よくもうちの可愛いがってる潤君を傷つけてくれたな・・・おまんら、許さんぜよ!

「母ちゃんそれスケバン刑事の決めゼリフ!
南野ちゃんのやつっ!」

「あら?間違えちゃったかしら?オホホ・・・」

オホホじゃねぇよ!!
こんな時に何やってんだよっ


「何だこのババア、お前らこんな事していいのかよ!
不法侵入で警察呼ぶぞ!」

神崎が息巻く

「警察呼ばれて困るのあんたなんじゃねえの?
潤の事だけじゃなく、パソコン、スマホん中にすっげーデータあったけど?」

翔君が神崎に近づいてスマホをチラつかせる

「お前、どうやって・・・」

「これぐらいちょっとした知識さえあればすぐパスワードなんて解除できんだよ。」

「ふざけんな、お前ら!いい加減にしろよっ!」

神崎が激怒し暴れ始めると母ちゃんに視線で促され、神崎の背中にオイラが乗り上げ腕を捻り顔を上げさせる

「あんた、ちっとも反省してないね?」

母ちゃんの声がいつもとは打って変わり
低く冷たく響く

「当たり前だろっ!俺は悪くない。みんなはじめは恥ずかしがって嫌がるけど最後は気持ち良さそうにするんだぜ。そんなの合意と一緒だろ」

神崎がニヤニヤ笑いながら答えた。

「・・・嵐組って知ってる?」

「知ってるさ。この辺仕切ってるデカいヤクザだろ?それが何だよ」

「なら話は早いわ。もうすぐ組のモンがここへ来るから人生一から教えてもらいなさい。
ついでに痛い目にもあっときなさい。それがあんたの為だわ。」

「は?何言ってんだよ!訳わかんねえ」

「逃げようとしても、もうあんたの個人情報も渡してあるから逃げらんないからね。」

「ちょっと、待てよ。嵐組とババアと何の関係があんだよ?」

「大した関係じゃないわ。嵐組組長がおばさんの実家の父親ってだけよ」

「え・・・」

「ええーーー?!」

言っちゃったよ。
神崎より翔君が驚き過ぎて目を白黒させてんじゃん・・・

人を傷つけた痛み、よく味わうのね。
・・・と言う事だから、智、翔君帰りましょ」

懇願し泣き叫ぶ神崎を置いて、オイラ達は部屋を後にした。


帰り道

「俺、絶対おばさんを怒らせないようにしよう・・・」

翔君が呟くと

「大丈夫よ、翔君イケメンだから。
でもそうねぇ、もし潤君を辛い目にあわせたらおばさん怒っちゃうかもよ?」

「えっ、なんっ、どっ?」

翔君がわかり易くテンパる。
もう動揺しすぎだって!


そういやぁ・・・
「翔君、神崎を普通に殴ってたな・・・オイラの想像と違ったわ」

「そう?そんなに俺紳士じゃねぇから。俺だってやる時はやんだよ。」

翔君がドヤ顔で得意気に言う。
・・・気分良さそうだから黙っとこ・・・

「あとね、この事は潤君には黙っててね。
潤君に恐がられたらおばさん寂しいんだもの」

「うん、わかった。俺も今関わった事は潤に内緒にして欲しい。あいつ絶対迷惑かけたって気にしそうだから。」

翔君・・・松潤の事よく分かってんな。
ちょっと面白くない。

「じゃあ、オイラが一人でどうにかしたって事にするかんな!もし松潤がオイラに感謝して抱きついても翔君ヤキモチ焼くなよ!」

「なっ、そっ、いやっ!」

・・・・・・翔君が何て言ってるかオイラ、分かるようになってきたわ・・・




こうして我ら三銃士によって松潤の操と平和は守られたのであった。


翔君が人を殴る時はロボコンパンチみたいなんだろうなぁ・・・とオイラが想像していた事は翔君には内緒だ。


ロボコン、極妻、スケバン刑事・・・