去る11月7日、本会会員(邦楽部会)の山木七重さんが、七代山木千賀の襲名披露演奏会を開きましたので、その模様を報告いたします。
箏曲には、生田流・山田流といった二大流派があり、山田流は江戸時代中期に、流祖山田検校が江戸浄瑠璃を箏曲に取り入れて作り出し、江戸中で大流行した歌曲本位の箏曲です。山田検校には、山登・山木・山勢という山田流御三家と呼ばれる優れた高弟がおり、その山木派の七代目家元として、この度山木七重さんが山木千賀を襲名しました。
山木千賀さんは、父上である六代山木千賀さんから箏の手ほどきを受け、東京芸術大学邦楽科の修士課程修了後、リサイタル開催等山田流箏曲の研鑚を積むとともに、河東節・荻江節(共に三味線音楽)といった古曲の伝承にも取り組んでおられます。
この度、11月7日国立劇場小劇場において開催された襲名披露演奏会では、生田流・山田流・尺八・河東節や山木派に縁のある先生の賛助出演を得て、これまで山木派が積み上げた歴史や七代山木千賀さんの技術や人望を感じさせる、10時間35番組に亘る華々しい演奏会となりました。
演目としては、山田検校作曲『葵の上』(源氏物語「葵上」に関する謡曲を題材とした難曲)、『熊野』(平家物語「熊野」に関する謡曲を題材とした美しいドラマ性を持つ曲)、『桜狩』(謡曲「右近」「吉野天人」を題材とした花見の情景を表した曲)や、『松竹梅』(吉祥の松・竹・梅を読み込んだ華やかな手事物)、六代千賀作曲の『一葉叙情』(樋口一葉の作歌に手付け)、『扇の的』(平家物語の那須与一を題材)、河東節『松廻寿翁三番叟』(五穀豊穣を祈り祝儀で舞われる「三番叟」の一つ)のほか、子供曲『チューリップ・きらきらぼし』など幅広い演目が披露され、合同曲『寿くらべ』(浦島伝説を題材とした長寿を祝う祝儀曲)で賑々しく締めくくられました。
演奏の随所に、千賀さんの確かな箏・三味線の演奏技術、持って生まれた美声が垣間見え、邦楽界の将来を担う責任感が感じられました。また、助演の先生の力添えも得て、山木派の弟子たちも一致団結した演奏を披露し、山田流箏曲界の発展を感じさせる襲名披露演奏会でした。
NHKラジオや各演奏会等への出演のほか、音舞会邦楽部会演奏会にも不定期で出演しておりますので、今後とも山木千賀さんの活躍に期待いただければと思います。
本山淳一 記