母に少しでも楽をさせたい。
そんな思いで進学校を目指し、奨学金を借り、公立の短大から大企業を志した私。
けれど就職活動で見えてきたのは、「努力」だけでは通れない現実でした。
今回は、短大生だった私が総合商社に入社し、そこで体験したことをお話しします。
受験戦争があるのは、多くの人が「大企業に入りたい」からですよね。
では、大企業に入るとどんな良いことがあるのでしょうか?
今日は女子目線の、昔のお話をさせてください。
⸻
私は遠方の短大に寮から通っていて、就職活動は短大の就職課で行いました。
ただ、短大は私の地元ではなかったため、地元の就職先はほとんどありませんでした。
最初に受けたのは誰もが知る総合商社S社。校内選抜で落ちました。
次に挑戦したM社も総合商社で、校内選抜には通りましたが、二次面接で落ちてしまいました。
後がなくなった私は、以前「うちに来ませんか?」と声をかけてくれていた地元銀行の行員に相談。
試験を受けて内定をいただきました。
ところがその後、M社から補欠合格の連絡があり、最終的にM社へ入社できたのです。
⸻
入社して驚いたことがあります。
同期は女性ばかり16人でしたが、後で聞くとコネ採用が多かったのです。(取引先の社長の娘さんなど…)
市内の女子短大卒がほとんどで、四年制大学出身者は全員がコネ入社でした。
お給料は当時、公務員が10万円に対して総合商社は12万円。
ボーナスも年2回あり、一度に3か月以上支給されました。
母を扶養しているので結婚するまでは、給料に「扶養手当」も付きました。
健康診断も会社内で訪問医師により行われ、歯科検診は「サンスター」から派遣されました。
体調が悪い時や歯科の通院まで勤務時間内に行くことができました。
生理休暇も有給扱いで、生理痛の酷い私はずいぶん助かりました。
他にも色々な事が優遇されていましたが、長くなるので割愛します。
私は経済学科出身だったからか経理課に配属。
同じ課の同期は栄養科出身でした。
就職には経済学科が有利と聞いていたので、まずそこで驚きました。
彼女に「学内選抜、厳しかったでしょ?」と聞くと
「そんなのなかった。うちの学長がコネを沢山持っているから、良い会社が選び放題だった」と。
その瞬間、私の努力は無駄だったのかと絶望しました。
母子家庭で、母を楽させたい一心で進学校を目指し、奨学金を借り、公立短大に進学しました。
一方、彼女の出身校は、私が「公立高校の滑り止め」で受けた学校からエスカレーター式で進める女子短大。偏差値も高くありません。
「私の頑張りは何だったの?」と心が崩れ落ちる音が聞こえた気がしました。
⸻
せっかく入社できた総合商社でしたが、当時は寿退社が主流。
私も6年勤めた後、妊娠出産を期に退職しました。
妊娠中は楽な仕事を担当させて貰えるなど、凄く大切にしてもらえました。
辞めてしまったのは、母に子育てを任せたくなかった、という思いもありました。
その後は中小企業や家族経営の会社を転々としました。
そして後になって「大企業に入れたのは本当に幸運だった」と実感しました。
給料も福利厚生も手厚く、男性社員は東大・早慶出身がほとんどで育ちが良く、パワハラもなし。
セクハラも高齢上司の“軽い”ものだけ。
社内禁煙で女性にお茶汲みをさせる習慣もなく、商談のコーヒーはビル内の喫茶店から配達されるほど。
労働組合もあり、私は組合の経理担当として東京本社へ出張も経験しました。
⸻
「大企業に入ったなら社内結婚の道もあったのでは?」と思われるかもしれません。
ですが、地方支店の男性社員は全員本社採用で、99%が既婚者。
社宅に家族と住んでいて、社内恋愛や不倫の噂すら聞きませんでした。
⸻
私が知っている大企業は一社だけ、しかも昔の話です。
それでも体質は今も大きくは変わっていないのではと思います。
やはり「ちゃんとした会社に入りたい」と思って受験勉強を頑張るのは、意味のあることなのだろうなと、今でも感じています。
ただし現在はどうかわかりませんが、コネという別の道もあるのは確かでした。
✴︎以上の文書はちゃとこ先生に添削して頂きました。