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乳がん検診(マンモグラフィ)と過剰診断~H Gilbert Welch氏の最新論文より~

がん検診(スクリーニング)によって生じる過剰診断(Overdiagnosis)過剰治療(Over treatment)の弊害の問題は、近年欧米の医療界を中心に真剣な議論が交わされる重要なテーマとなっています。

乳がんをはじめ肺がん、前立腺がん、甲状腺がん、子宮頸がん、大腸がんなど、多くのがん種で過剰診断・過剰治療が発生していることは疫学、医療統計学の専門家やがん研究者の間で共通の認識になりつつありますが、日本では、一般市民はもちろん医師の間でもその理解や周知はまだまだ遅れていると言わざるを得ません。

日本で行われている肺がん検診や胃がん検診は、効果(がん死亡の低減)を示す「エビデンス」がないなどの理由から欧米では行われていないにもかかわらず、日本では公費が投入され漫然と行われ続けています。
特に、この問題を考える上で重要な役割を果たすべきがん検診やがん診療に携わる医師や関係医療職(臨床検査技師、細胞検査士など)の間では、過剰診断の問題は軽視されるか殆んど無視され、メリットとデメリットに関する真摯な議論や検討はまともに行われていないのが現状だと思います。

そういった中で、過剰診断に関する研究の嚆矢(こうし)を切り開いた中心的研究者ともいえるH Gilbert Welch (MD)氏の最新研究論文がNEJM電子版に掲載されています。

Breast-Cancer Tumor Size, Overdiagnosis, and Mammography Screening Effectiveness

この論文は米国NCIのSEERプログラム(米国地域のがん登録システム)の乳がん統計データを解析してマンモグラフィ検診による乳がんの過剰診断を検討したものです。

論文の研究成果について、Welch氏は自ら解説した動画をYouTubeにアップされています。
英語の解説なので聞き取りが苦手な方にはやや厳しいかもしれませんが、論文の研究成果がコンパクトに分かりやすく纏められています。



また、Welch氏は医療関係職の方や一般市民向けに精力的な講演活動もされており、その講演ビデオも複数公開されています。




Welch氏の最新論文に対してさっそく反論記事を発信した医師がいます。

『マンモグラフィーは過剰診断につながるのか??????』(「中村祐輔のシカゴ便り」より)

「?」マークを6個も並べたこの批判記事は、マンモグラフィ検診による過剰診断を否定し、検診による「早期発見・早期治療」の「効果」を無批判に全面肯定するものになっています。しかしその記事は、検診や疫学に関する知識が多少でもある医師なら当然知っているはずのリードタイム・バイアス(lead time bias)やレングス・バイアス(length bias)について全く不見識だと見なさざるを得ないようなあまりにも低レベルな内容であり、逐一批判するのもアホらしく思えるものでした。
筆者の中村祐輔氏はその言説がネットメディアや雑誌等でも取り上げられ、それなりの知名度、影響力のある医師ですが、ご自分の専門(がんの免疫、治療法の研究)外のことについて、不見識のまま思慮の足りない言説を垂れ流すのは問題だと考えます。
また中村氏はHPVワクチンの問題に関しても、「子宮頸がんワクチンでも、明らかに日本は世界から見ると異端児となりつつある。」と、産婦人科学会や小児科学会の主張をそのまま受け売りするかのような言説を具体性もないまま無定見に発信していました。
http://yusukenakamura.hatenablog.com/entry/2016/05/02/175807


【参考記事】

”STOP! ピンクリボン! ”マンモグラフィは過剰診断を増やすだけ””

マンモグラフィは過剰診断を増やすだけ(最新論文)
(※コメント欄も是非ご覧下さい)

STOP! ピンクリボン! ”マンモグラフィは過剰診断を増やすだけ”(ほたかさんのブログ記事)