癌の末期がわかった、こうちゃんのお母さんが元気になってほしいと作りだした、「こうちゃんの絵本」ができたのは1年に満たない間の事。

ただただ絵本をお母さんに手渡す事だけを考えて走り抜けた日々。

3冊セット?印刷して本屋さんに置いてもらう?
いくらかかるかわかってる?
無理だから、一冊だけ、手作りしたら?

と本と関わりの深い人に相談したら、こぞってそう言われた。

でも、結果
やってよかった

500セットを売り切るのは結構しんどかったけど、私の中にこんな力があったと気づけたこと、助けてくれる人が周りにいた事。

私は営業職が苦手で、就職もそれ以外の教員にしてきた。
でも、人に物を買ってもらうことを初めてして、そんな事を仕事にして、ストレスと戦い頑張ってる人がいるという事も理解した。

 でも苦手なことをやって初めて人の優しさに気づけた。


頼んでもないのにいっしょに、買ってもらえるように、事務局を立ち上げていっしょにやってくれると言ってくれた2人。

いつもせこい事ばかり言う夫に相談した時、もし売れ残ったりしても、どうしてもやりたいんなら、やればいいし、お金がなくなっても、なんか我慢すればいい。と言ってくれた。

私の当時勤める養護学校で職員会議で絵本を買ってくださいと言ったら、校長先生は自分のポケットマネーから5セット買ってくれ。ほとんどの先生たちが買ってくれた。

私の友達は教員仲間が多いので、子ども達に講演に行かせてもらい、その後先生達に注文してもらったり。

うーちゃんは幼稚園教諭の職員研修に私を呼んでくれ、そこでもいっぱい売れた。

私の結婚してない友達。1セット4500円は、決して安くはない。でも、買ってくれた。


土日は、1軒1軒本屋さん巡り。
1セットでもいいから、私の手書きの説明ポップと置かせて欲しいと回った。


そこでもすごい出会いがあった。
私の実家のある街の1番大きな本屋さんから、電話があり、20セット注文があった。

「頑張ってね。応援してますよ。」

と言ってくれた人は、目の見えないランナーとしてパラリンピックで金メダルをとった道下美里選手のお母さんでした。

その時はわざわざ注文してくれて、ありがたいしか思わず。

道下美里選手がパラリンピックで金メダルを取って、そこの本屋さんの娘さんが目が見えなかったと初めて知りました。

それから、道下さんを応援し続けています。


今忙しいと話しも聞いてくれなかった本屋さんもありましたが、ほとんどの本屋さんが1セットだけ、置いてくれました。

一生懸命と言える事を初めてやったような気がしました。

一生懸命やったら、人って助けてくれるんだな。
そう思ったのも、この時が初めてでした。

図書館に持って行ってくれた弟のお嫁さん。

事務局に
「癌の末期ですが、私の家族に読ませてたいと思い買いにきました。」
と40代の女性。

そして何より、音楽療法士のK子先生。子ども達の未来の為に日々音楽を提供してる傍らでこうちゃんのCDを作り、
こうちゃんや、子ども達に残してくれた事。


今まで買ってくれて助けてくれた人に感謝してもしきれない。


その時はみんなにお礼を言えてなかった。


ありがとう。


つづく


















#