彼女が亡くなり、亡骸が自宅へ戻ってすぐにK子先生と2人で 駆けつけた。 


穏やかな顔で横たわる彼女の横で、こうちゃんのお父さんは、


本当はこうちゃんのお母さんは夏を越せないと医者から言われていたこと、彼女が 絵本の反響が自分の支えになっていると 最後に言っていたことを話してくれた。


お父さんは、はじめの頃、絵本づくりのことを

私が話してもそっけない態度だった。

そのお父さんが私たちに 彼女の最後を生かしてくれてありがとうと言ってくれた。 



学校で見る時はいつも冷静なお父さんが泣いていた。


3人で一緒に泣いた。




お葬式の日、こうちゃんのお父さんは斎場のスクリーンで、


お母さんに唯一手渡しできた、絵本「ほんわかへんてこ ふしぎなこうちゃん」を流した。


お父さんは絵本をプロジェクターに読みとっていた。

たぶんこうちゃんのお父さんは、お母さんが亡くなってから、一睡もしてないと思えた。



斎場に流れるお母さんの声に、こうちゃんはまゆをひくひくさせている。 


なんだかしっかり者のお母さんが、自分で自分の弔辞を読んでいるようだった。 


たくさんの人が泣いていた。


お坊さんのお経を


こうちゃんは真似した。


とても笑えるはずのない状況が悲しくて切なかった。


棺には、 平さんが斎場に持ってきてくれた、 今日できたばかりの

1巻「こうちゃんのちょこれーとけーき」と

3巻「なりたい、なっちゃったこうちゃん」が納められた。



棺が車に乗せられて焼却場へ行くとき、こうちゃんの姿は親族の バスの中になかった。


担任が養護学校へ連れて帰るという。 


私は理解できなくて叫んだ。


「私が仕事を休んで、タクシーでこうちゃんを焼却場まで連れて行きます。」


担任は

「僕も昨日、親戚の人たちと話したけど…。

 もう僕たちが口を挟む問題じゃない。」


「じゃあ、

こうちゃんはお母さんと最後のお別れできないの? 

やっぱり私がー。」

と言いかけた時、


 養護学校でこうちゃんと同じクラスのカッくんのお母さんが口を開いた。

「先生、もういいんですよ。 」


カックンのお母さんは、こうちゃんのお母さんが入院してからずっと、こうちゃんのこと、おばあちゃんのこと、色々力になってきた人だった。 


「身内の人が決めたのならしょうがないから。私たちにもどうしようもできないから。

みんな今まで言えないような辛いことがきっとあってるんです。 みんなが静かにしている時大声をだしたりして、白い目で見られたり。だから仕方ないんです。」


もう私からは何も言えなかった。


何に対して怒っているのか。


何が悪いのか。 


誰がこうちゃんが最後お母さんといられなかったことを責めることができるのか。


悲しい1日だった。