会話が無い。
必要最低限のやり取りはしても、目も合わせない。
食事の時間はまるでお通夜。
私の食行動が原因で怒られてばかり。
家族との、そんな日々。
私さえいなければ。
私はこの家のただの穀潰しで、要らない人間。
何をしても怒られる、生きるのがツラい。
この家にいたくない、いられない。
ある日私は、家出をした。
家を出たはいいものの行き先の宛もなく、
でもとりあえず人の多い所へ行こうと思った。
大量の荷物を持って、電車で東京へ。
初めての街を、とにかく歩いた。
気づけば辺りは暗くなり始め、初冬の寒さが骨身に染みた。確かこの時の体重は28kgほど。
重い荷物と共に歩き疲れ、寒さに凍え、体力は限界に近かった。
人気のない神社とかで野宿しようと思ってたけど、
もちろんそんな場所は見つからなかった。
疲れと寒さに耐えきれず、近くのコンビニに入った。
イートインスペースでスマホを開いた。
母からの連絡を既に何度か無視していた。
その時ちょうど、母から電話がかかってきた。
私はもうダメだと思っていた。
…ここどこ?助けて、やっぱり帰りたい…
「もしもし…」
「○○!今どこなの?ずっと心配してたんだよ」
母は涙声だった。その声を聞いた途端に私も泣いた。
「ごめんなさい…今…東京のコンビニ…
○○店って書いてある…」
そこからは早かった。
両親は私が居なくなってすぐ、家出だと気づいて
警察に捜索願を出していたらしい。
少ししてパトカーが来て、私を乗せて地元の警察署まで連れ帰ってくれた。
そこで両親と再会した。
たった半日、短い家出だった。
私は警察官と両親に泣きながら謝った。
父は静かに黙っていて、母は涙を流していた。
家に帰っても両親は怒らなかった。
母はむしろ、私に謝ってきた。
「今までごめんね、○○がいちばん辛いのにきつく当たってばかりで…反省してるよ」
「そんなことない、私も…ごめんなさい」
その日から少しずつ話し合いを重ね、
家族3人の仲も少しずつ良くなっていった。
それでも体重を増やすことは出来なくて、
むしろ少しずつ食べられなくなっていって…
25kgくらいまで落ちたところで再入院になった。
16歳の冬。
4度目の入院。
5ヶ月で33kgまで回復して退院した時には、
17歳になっていた。
4度目の入院の後、私はすっかり治った気がしていた。
でも、そんな簡単じゃなかった。