小泉八雲の愛した日本の面影Ⅲ「団子をなくしたおばあさん」語りと三味線常磐津文重太夫
 
小泉八雲の怪談集の中でも異色のユーモラスな作品です。いつもにこにこ、団子作りの大好きなおばあさんはある日団子を落としてしまい転がる先は穴の底、人食い鬼の住む異界へたどり着きます。そこで鬼たちにせっせと、一粒の米がかき混ぜていると鍋いっぱいになる「魔法のしゃもじ」で食事を作り長いあいだいっしょに暮らします。人のよい鬼たちは決しておばあさんを怖がらせたりしません。
それでも小さい我が家に帰り団子をつくりたいおばあさんは、寂しくて隙を見てしゃもじと共に川を渡って脱出します。
川の水を飲み干し渡らせまいとする鬼と、にらめっこで応戦するおばあさん、たまらず飲んだ水を全部吐き出す鬼たち。この攻防が何とも可笑しいですね。家に戻ったおばあさんは好きな団子を作ってはみなに売ってお金持ちになったとな。
常磐津の語りで表情豊かに演じられます。
おむすびころりん、傘地蔵、ロシアの「まほうの鍋」を思い起こす楽しい再話文学です。
 
小泉セツさんゆかりの稲垣明男氏が紙芝居の原画を提供して下さいました。当初、プロジェクターでスクリーン投影を予定しましたが、昼公演では画像の明るさの確保が難しいとわかり、本番2日前に急遽紙芝居案に変更、大わらわで大型紙芝居作成をいたしました。材料を求め、夜の町を俳優石井ひとみ、森反で走り回ったのも思い出深いものです。
 
さて、本番は軽妙な語り口と調子、三味線の妙技(名技)も堪能できる17分の作品に仕上がりました。お客様の笑い声もあちこちで沸き、華やいだ雰囲気に包まれました。
ここまででプログラム前半終了です。
 
川の水を飲み干せるほどの鬼が水害を減らしてくれればとふと思っております。
お写真は
①七崎福太郎画団子をなくしたおばあさん
 稲垣明男氏提供
②明治のちりめん本より団子をなくしたおばあさん
 池田雅之氏提供
③上演風景(昼公演)
 
団子をなくしたおばあさん初演メンバー
語りと三味線:常磐津文重太夫
鳴り物:高橋和久 石井ひとみ