過去、直前の天候不良で3度キャンセルした槍ヶ岳山荘。

槍を登るなら絶対泊まらなければならないお宿と決めている。

ところが良き天候とのマッチングでなかなか予約には至らず、今回ようやく念願がかなった。

今回はデブ老夫婦に優しめの山行を計画。

初日は槍平小屋で1泊し、2日目に槍の穂先に立ち槍ヶ岳山荘に泊まって、3日目に下山する飛騨沢ルートを選択。

直前まで予報でヤキモキしたが、土日の降水量が低かったので最悪少雨でも仕方なし、として決行した。

金曜の夜19時半に自宅を出発。

途中 中部縦貫道が工事中で飛騨清見で下りるというハプニングがあったが、無事0時前に新穂高温泉のWEB予約Pに到着。

天気が二転三転したので比較的空いている(朝になるとほぼ満車)。

このWEB予約Pは1日2600円と少々お高いが、新穂高センターの橋を渡ってすぐなので、人気の新穂高での駐車にはありがたい!!

車中泊をして朝7時半にスタート。

早朝は雨が降っていたが、出発時にはほぼ上がった。

まずは白くモヤった右俣林道を5km、2時間弱歩く。

左俣林道は昨年、暴風で槍を撤退した際に双六に向けて歩いたので、今回で左右林道を制覇ということになる。

緩やかな登りの林道で、途中1時間で穂高平小屋に着く。

しばし休憩し更に進むと奥穂への登山口を越えて白出沢に到着。

約2時間の林道歩きは良いウォーミングアップになった。

ここで大休憩をとっていよいよ登山道へ入っていく。

左手に右俣谷(蒲田川)を見つつガレ、ザレ、木の根で構成された木々の中を進む。

途中いくつかの沢を越えていくが、滝谷は幅も広く他の沢はほぼ枯れているのに対して、水量豊富で木橋が架けられている。
槍平小屋のライブカメラに映されているそれである。

ここの水はとにかく冷たくて、ちょうど晴れだしたタイミングで汗まみれとなった顔を洗って、手ぬぐいを冷やすにはちょうどいい沢だ。

しかも上流には雄滝が望める、ロケーションも良い休憩ポイントである。

橋を渡ってすぐ藤木レリーフがある。

藤木久三さんは日本のロッククライミングの先駆者で、六甲のロックガーデンの命名者でもあるらしい。

更に進み木道が出てくるとちょうど13時に本日のお宿 槍平小屋に到着。

こじんまりとしたキレイでかわいい小屋だ。 部屋は2Fのくろゆりで4~5人のところを2人で使わせて頂けた。

床が発泡ウレタンのようで、登山者にやさしく柔らかいのがありがたい。

チェックイン後 早速ビールとカップ麺を頂く。

ここからは南岳や北穂が望めるが、南岳はすっきり見えたが北穂は雲の中だった。

風もなく暖かかったので外のベンチでウトウトしてたあと晩ご飯を頂いて就寝(ここは電波入らず)。

よく暖房が効いているようで暖かく寝させてもらった。

夕方から曇りだしたので星空は望めず。

翌朝は早出だったので朝食は弁当にしていたが、嫁さんは「腹減った・・・」と食べてからの6時前に出発。

テン場を越えてしばし緩やかなガレ道から徐々に傾斜が強くなり、最終水場を越えてさらに進むと森林限界を超える。

森林限界を超えると槍ヶ岳山荘が見え、左手に西鎌の尾根が望めるようになる。

どうやら今日は快晴のようだが、出発時の予報では午後がイマイチだったので、晴れているうちに穂先に立てるように先を急ぐ。

8時に千丈沢分岐に到着。

ここには槍平小屋のご厚意で救急箱が設置されており、登山者の安全確保に一役かっている。

ここからは昨年強風で歩けなかった西鎌尾根へ向け進む。

序盤はトラバース気味に比較的緩斜面を進み、後半は西鎌の千丈沢乗越に向け急登を登る。

このあたりで山影から太陽がお出ましになって暑いのなんの・・・と何とか稜線に出ると思いもよらぬ爆風が吹き荒れている。

ただ登り切ると絶景が広がっている。

双六に伸びる西鎌尾根、鷲羽、水晶、野口五郎、振り返れば西穂~ジャン、そして槍ヶ岳がド~ん!!・・・爆風なので先を急ぐ。

ガレたアップダウンを進み、最後は山荘に向けた急登を登り詰めると、憧れていたとおりの槍ヶ岳が眼前にそびえ立っている・・・感無量!!

穂先に向けて這いつくばっている人影がまばらだったので、急ぎチェックインを済ませてメットを着用し空荷で我々も穂先に向かう。

マーキングが明確で危険ゾーンには鎖、ハシゴ、ボルトが設置されているので、もちろん滑落すれば一発アウトだが、三点支持で確実に登れば難易度が高いとは思わなかった。

あっという間にビクトリーロードならぬビクトリーラダーに取り掛かり、ついに登頂!!
狭い山頂だがそこまで人も多くなく、祠の前で記念撮影。

笠ヶ岳に雲がかかっていたが、双六・薬師・鷲羽・水晶・燕からの表銀座・大天井・常念・穂高連峰と北ア オールスターズが勢ぞろい。

快晴の中で風は強かったが贅沢な眺望が楽しめた。

強風のためみなさん早めに下りられたので、小5の男の子とお父さんと嫁さんの4人でのほぼ貸し切りを堪能できた。

最後に祠の向こう側の北鎌尾根を覗きに行ったが、よくもこんなルートを登って来れるものだと少し背筋が寒くなった・・・奥穂から見たジャンのルートとはまた違った恐ろしさがそこにはあった。

さすがに寒くなってきたので名残惜しいが下山する。

登下 違うルートだが、下山ルートの方が少し難易度が高いように感じた。

もちろん三点支持で問題ないのだが、手がかり・足がかりがわかりにくい箇所がいくつかある。

夢見心地の約1時間を無事終えて、ここからは念願のテラスでハッピーアワー。

・・・と、まだ12時半なので、ビールを1本にして昼寝をするという嫁さんを残して大喰岳(3101m)へ空荷で向かう。

大喰岳は隣の中岳と南岳とともに日本百高山に数えられるお山である。

因みに南岳から向こうは北穂に向けた有名な大キレットとなる。

ホントは翌日 大喰岳→中岳→南岳→槍平小屋のルートで下山したかったのだが、天候が悪そうなので、せめて一座だけは登っておく。

テン場を越えて一旦 飛騨乗越まで下って登り返す。

ガレた登山道を10分ほど登るとフラットな岩場となり、山頂に気づかず通り過ぎて引き返す。

少しわかりにくい山頂だがここからの眺望も最高だった。

槍の山頂よりも、ここからはオールスターズ プラス槍ヶ岳そもののが見えるからだ。

テン泊の方と少しお話をさせて頂き下山。

小屋に戻って飲みなおしていると夕食となり、翌日の天気予報を確認して就寝(ここは電波が入る)。

槍平小屋とは異なり、ここは上下ダウンを着て寝ないと寒かった。

翌朝は雨・・・しかも暴風雨。

6時から朝食を食べて、7時前に雨用フル装備で出発。

この辺りは風の抜け道のようで、レインに雨が叩きつけられ早々心が折れる。

なんとか千丈沢分岐まで下り、少し進むとようやく風道から外れたようで一安心。

岩で滑らぬよう慎重に歩を進める。

途中登山道が沢のようになっており、徐々に登山靴の中も湿り始める(結果、下山後は指がふやけていた)。

雨もやんだり小降りになったりを繰り返し、9時半過ぎに槍平小屋まで戻りついた。

ここでウエアを乾かしつつ、暖かいカップ麺とコーヒーを頂く。

しばしの休憩後にリスタート。

以降もスリッピーな岩場を慎重にクリアしながら、往路では枯れ沢だった所が少し流れがあったりしたが、滝谷の橋もそれほど増水は無く無事越えることができた。

さすがにこの雨で登ってくる登山者はいないだろうと思っていたが、ソロ3名とすれ違ったのには驚いた。

槍平小屋から2時間半で登山道終点の白出沢までたどり着いた。

ここからはなだらかな下りの林道なので、無心で傾斜に身を任せて進む。

13時半に穂高平小屋に着き、コーラを頂く。

ここからの1時間が長く感じた。

14時半に新穂高センターに帰着。

長く、楽しく、辛く、かといって感動的な3日間が終了した。

帰りは新穂高方面では我が家での定番である ひがくの湯 にて3日間の汗を流して、3日間分の運動量を越える晩ご飯を頂いて帰路についた。

今回は4度目の正直で快晴の中、念願の槍の穂先に立つことができた。

穂高もそうだが本峰の難易度はそれほど高いものではないが、そこへのアプローチが長くて辛いものであった。

2日間のアメと最終日のムチという山あるあるを経験できたのも、今後の山行につながる良い経験だった。

今年は槍穂という2大巨頭を登れたことに感謝したい。

さて次はどこに??