山家集 上 春 第73、74 | 徒然名夢子

徒然名夢子

日々此々と過ごしけるに
東に音楽の美しきを聴けば、其処何処に赴き
西に優れたる書物のあると聞けば、其処何処に赴き
其処においても何処においても
心楽しからむことのみを願い生きることは
我の本心にほかならず

山家集 上 春 第73
 
7053 たぐひなき 花をし枝に 咲かすれば
    桜にならぶ 木ぞなかりける
 
「たぐひなき」は「他に例を見ない」。
 
歌意
 他に例を見ない花を枝に咲かせるので、桜に並ぶ木はない。
 
靴冠
 たはささき きにはふる
 他の花は先に咲いて、木に葉とともにあるようだ
 
言わずもがなであるが、桜は、無葉状態で花を咲かせる。なので、枝から花が着いているように見えて、珍重された。そういう意味で「類無い」としている。
 
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山家集 上 春 第74
 
7054 身を分けて 見ぬ梢なく 盡󠄀(つく)さばや 
    よろづの山お 花のさかりを
 
「身をわけて」は「自分の体をいくつもに分けて」、「見ぬ梢なく」は「見ていない梢がないほどに」、「よろづの山」は「四方の山々」。
 
歌意
 自分の体をいくつもに分けてまで、様々な山の花の盛りを、見尽くしてみたい
「分身」は仏道の手法に通じて、もしも自分が悟りを得たのならば、すべての桜の花の盛りを見ることができるだろうか、という修行の願望が述べられている。