プライベートな問題に口を挟むつもりは、さらさら無いのだが... | 徒然名夢子

徒然名夢子

日々此々と過ごしけるに
東に音楽の美しきを聴けば、其処何処に赴き
西に優れたる書物のあると聞けば、其処何処に赴き
其処においても何処においても
心楽しからむことのみを願い生きることは
我の本心にほかならず

19歳の女性がピアニストになる夢をもって、毎日14~18時間練習している。学校に通っているときでも平日6~8時間は練習しているはずだ。1日休めば3日分元に戻る、とよく言われるが、その通りで、休んだ翌日に練習をはじめると、休み前にできていたことがまったくできないのだ。しかも元に戻すために倍以上の努力が必要になる。この負の経験は、恐怖でしかない。練習しなければ上手くならないという思いが、強迫性障害になることもある。

 

この19歳の女性には30歳ぐらいの婚約者がいて、ピアニストになることに反対しているという。若いカップルのようにデートに行き、映画を見、レストランで食事をし、お互い語り合うこともなく、きれいに着飾るのはリサイタルやコンペティションぐらいで、婚約者と食事をしていても、ふつうの格好だし、共通の話題もなく、音楽の話しかしない。そんな風に責められても、19歳の女性はピアニストになるのが夢だし、そのためには時間が足りない。婚約者のためにピアニストになる夢をすてるのならば、死んだ方がまし。

 

のようなことを19歳女性(ゲストです)から聞かされたのだが、「死ぬとか言うのはやめてね。自分の努力を否定することになるよ(日本語でやりとりできたのでよかった)」と、まずこたえて、「このプロジェクトにも土曜日午後と日曜日は休みじゃない、婚約者と遊んでくればいいじゃない?」と私の無責任発言。「でも、だれも休んでない。休みの日も夜中も、他のゲストは練習している。負けたくない。」、それはその通りなんだけどね。「じゃぁ、彼氏に一度ここの練習風景みてもらったらどう?彼氏、フランス語か英語話せる?」と上層部の許可なしの提案をしてみる。「それいいかも。でも彼は英語は少ししか話せない。日本語なら大丈夫です」。おっと墓穴掘った~。私は絶対相手したくないから「そうか、残念だな~。私のレッスンは夜だものね」。「いえ、彼は昼間は働いているので、夜の方が都合がいいかもです」。墓穴を深めただけだった。

 

その後、サブリーダーとスタッフに部外者の見学は可能か、と聞いたら身内ならば事前に申請して、練習内容やプロジェクトの情報を漏らさない誓約書みたいなものにサインしてもらえればオッケーだそうだ。へぇー、そんなに簡単に入れちゃうんだ...

 

19歳女性に「申請すれば彼氏の見学オッケーらしいよ~」とすごい低めのテンションで話したところ、「じゃぁ、スケジュール出次第、彼氏と相談して申請します。そのときはよろしくお願いします」。あーはいはいっと。

 

むかし、楽器店で土日のピアノ教室で教えていたとき、壁が透明で、レッスン風景が、保護者やそのほかの人から丸見えだったの。小学生の女の子は、かならず保護者(土日なので父母そろって)が付いてくるので、透明な壁の向こうからじーっとにらんでいるの。やりづらかったのを思い出した。まぁ、今のプロジェクトで腕や手をとって矯正するといったことは、まずないが、言葉のキャッチボールが、通常の人間の会話とは異なるので、知らない人はかなり違和感があるだろう。

 

例えば、

私「あー、その部分はさ、♪♪♪(ピアノ演奏)、みたいな」

ゲ「あぁ♪♪♪、ですか?」

私「うーん、それだと♪♪♪かな」

ゲ「そうですね、♪♪♪、でどうでしょうか?」

といった感じ。このような対話はまだ優しいほうで、(なにやってんだこの下手くそが!)モードのときは、

ゲストが弾いているのに、かぶせて弾いてしまって、

ゲストがひるみ、「何がわるいんでしょうか?」とおびえて聞き、

私が無言で弾き見せる、

といったやりとりの方が圧倒的に多い。この場合、見学していても何がどうなって、なぜゲストがおびえるのか、まったく意味不明だろう。ゲストがおびえるのは、私が怒っているからだ。直接的な怒りをぶつけることは全くないが、チューターは自分の感情の起伏を音楽をつかってゲストに語りかけ、ゲストの抽斗を増やす種にしていく。

 

あるチューターは、しゃべりながら弾いて見せている。別のチューターはゲストの前でほとんど演奏しない。議論から入る。ちょっと弾いてアナリーゼ不足の場合は、どのチューターも議論から始める。この場合レッスン時間が長くなってしまう。これは、今回のプロジェクトではチューターごとに曲集(エチュード、マズルカ、ソナタ、ワルツ、バラード...)に分けているため、曲集の理解のためにドローイング手法も変わってくるからだ。ゲストが来る前に作ったメニューにそってチューターは指導している。そういえばゲスト毎の電子日誌ができあがっていた。フランス語なので、私は日本語で書いてスタッフさんに入力してもらう。しかし他のチューターのコメントが全くわからない。音楽用語だけつなげて読んでいるが、必要なときには通訳のスタッフさんに教えてもらっている。

 

閑話休題、19歳女性に「彼氏呼んでレッスンを見学させるなら、ショパンとロマン派の音楽の知識を勉強しておいてもらってね」と遠回しに呼ぶなよ、と言ったつもりだが通じなかったようだ。残念。ほんと、プライベートな事情なんてどうでもいいし、そんな相談されても困るわ。と怒ってロビーにでたらサブリーダーから肩をポンポンとたたかれ、ウィンクされた。ん?と思ったが、スポンサーのスタッフから私たちの日本語の会話を伝えていたそうで、「優しいね」って褒めていたそうだ。本心ではない言動での結果を褒められても、全く良い気がしない。しかし、青い目のウィンクって、フランス人ってなんかすごいな。気持ちはすごくわかったよ。