今回の法語である。
『 雨が降らなきゃ、虹は見られない。
No rain, no rainbow.
ハワイのことわざ 』 59枚+\10
日本語では、雨と虹の漢字には関連性が見えない。
それもそのはず、
虹の文字に「虫」があることから分かるように、
昔は、生き物(竜)の一種だと思われていたらしい。
空に横にかかる七色の竜、なんて幻想的だなぁ。
それが英語だと、
rain(雨)+bow(弓)
というように、ちゃんと関連性が見える。
時には、恵みの雨でもあるけれど、
雨で濡れるのは、ほとんどの場合は好きじゃない。
けれど、虹が出たときにはキレイだと思う。
虹が出てもキレイだと思えないくらい心の余裕がなくなっていたら、
それは悲しい。
虹(rainbow)の中に、雨(rain)が隠れているように、
漢字で言えば、幸せの中には辛いことが隠れている。
禍福は糾える縄の如し。
だから、辛いことばっかりもないし、幸せばかりでもない。
それらを引き受けて行こうという覚悟があればいいのだ。
「虹の足」(作:吉野弘)
雨があがって
雲間から 乾麺みたいに真直な
陽射しがたくさん地上に刺さり
行手に榛名山が見えたころ
山路を登るバスの中で見たのだ、虹の足を。
眼下にひろがる田圃の上に
虹がそっと足を下ろしたのを!
野面にすらりと足を置いて
虹のアーチが軽やかに
すっくと空に立ったのを!
その虹の足の底に
小さな村といくつかの家が
すっぽり抱かれて染めていたのだ。
それなのに
家から飛び出して虹の足をさわろうとする人影は見えない。
――おーい、君の家が虹の中にあるぞオ
乗客たちは頬を火照らせ
野面に立った虹の足に見とれた。
多分、あれはバスの中の僕らには見えて
村の人々には見えないのだ。
そんなこともあるのだろう
他人には見えて 自分には見えない幸福の中で
格別驚きもせず 幸福に生きていることが――。