外科医が予約を入れていたので期待して待っていたのだが、結果は残念な知らせになった。

結論から言うと『外科的手術は出来ない』というものだった。

色々な説明をしていたが、要は手術をする事によって近くに有る腫瘍を刺激してしまい、寝た仔を起こす様な事にしたくない...という事だった。

既に結論は出てしまっているのだから交渉の余地は無く、元々外科医が受ける事は無いだろうと考えていたところを、たまたま前回の執刀医が男気のある方だった事から難しいオペを前向きに考えてくれていた訳で、この医師には感謝こそすれ、できない理由を問い詰めるなど意味の無い話だった。

私に代わり、組織に対してオペの必要性を説得してくれた外科医に、心から感謝の意を告げて大腸外科との会話は終了となった。

さてこれで、文字通り腹を括らなければならなくなった。
小腸の中間付近に開いた小さな穴が奇跡的に塞がらない限り膿瘍ドレナージによる治療は継続で、腹に挿し込んでいるチューブは外せなくなる。



退院の障害となるのは、
①挿入しているチューブを衛生的に維持する必要性から、挿入口から漏れている腸液を押さえているガーゼを2〜3時間ごとに交換する事。
②腸の負担を減らして腸液の粘度とゲル状物質の混入を抑える為には、流動物の経口摂取ではなく栄養点滴によるカロリー摂取になる事。

この栄養点滴によるカロリー摂取は、感染症予防の為に、心臓付近の中心静脈にカテーテル留置してあるポートの針交換(抜針して穿刺し直し)を週に2回行う必要がある。

この2つだけでも充分に入院要件を満たしている

また、原料素材とはいえ食品工場に、腹に挿入したチューブから腸液が漏れ出てる状態では食品衛生上 立ち入る事は出来なくなり、必然的に退職となる。

この1週間の手探り状態の治療の流れの中では治療マニュアルも確立されておらず、治療のゴールも見えていないのだが、取り急ぎ職場の責任者に電話を入れて、外科との話し合いが不発に終わった事を話し、今後は出社できない旨の説明と身の振り方について話をした。

私の退職に伴う職務の引き継ぎなど事態の収束については、まだ治療のゴールも決まっていないレアケースなので、来週以降にがんセンターへご足労頂き、大凡のスケジュールだけでも決める方向で理解して貰った。

上司としては「1週間だけ休む」と言って入院していた部下が、10日後には「このまま出社できずに退職」と伝えてきたのだから、まさに寝耳に水で頭の中の整理が追いつかず、社長への報告の為の病状確認が精一杯だった。

何れにしても一つずつ決めて行くしかない....