商社時代に製薬会社と新薬の開発に携わっていたので、必然的に薬学と生理学の基本を身に付ける事になり、医薬品の承認や保険適用後の病院での処方に関しても親しくなった役人や医師から情報を得たりしていたので、製薬業界の仕組みや、現職の健康食品業界の裏話などを看護師さん達は興味があったのか手が空いた時に話を聞きに来た。


看護の仕事は、昔から徒弟制度で引き継がれてきた先輩後輩の職場だったのだろうが、最近ではマニュアル化や徒弟制度の見直しが進んで、厳しく教えられて泣きながら仕事をしている看護師など居なくなり、新人の仕事量を減らして負担の増えた中堅やベテランが残って記録の入力をしている光景を目にする。


近頃は先輩と上手に接する事が出来ない不器用な若手看護師も居るのだが、ツーサムで組んだ先輩の方が気を遣っている場面を何度か見かけた。


後日、ベテランと中堅のツーサムコンビが血圧を測定してくれている最中に、逆気遣い状態の事を話すと、笑いながら

「sugarさんから言ってやって下さいよ〜!」

と口を揃えていたのだが、その後は私の担当にならなかったので言いそびれてしまった。

思った以上に徒弟制度の崩壊は進行していると感じた。


件の若手看護師は、私が持ち込むのを忘れてAmazonに病室から発注した保温ポットが届いた時、無言で包みを持って来てポンと置き、『Amazon??』という驚いた様な顔をしていたので、思わず苦笑して謝礼を言うとコクンと頷いて無言のまま去って行った。


その後、担当になってからは笑いながら言葉を交わす様になったが相変わらず 若者らしい雰囲気だった。


まぁ、それでも怖い先輩はいる様で、島崎和歌子の様な口調でハハハと笑いながら明るく厳しい事を言うベテランの前では神妙な顔をして返事をしていた。


時代は令和となり、昭和は大昔なのだろう