『あの頃のバンド、二つ目のバイト』

   椎木知仁 //
   ガイハンボシとアコギ より





二つ目のバイト始めたんだ コンビニなんだけど

嫌味な店長に 本当嫌気がさしてる

あれから何年経ったろう

いつのまにか歳をとって 夏が過ぎてって

押入れの奥のパーカーを 引っ張り出してきて

去年と同じ匂いがした



一人、夜を歩いてる

一時前 ビールにもなりきれないし

帰ろうかな



散らかった部屋と

変わらない毎日と

目をこすったまま出掛けるバイトと

飲みかけのペットボトルと

浮ついた愛を



嫌いだったあいつと

変わってく街と

変わらない夕方と

自転車を

許せなかったこと

許さなかったこと



あの頃のバンド続けてるんだ

上手くはないけれど

あの頃の曲も 最近はやらなくなったけど

たまには見にこいよ

君が帰って結局 今日も一人で寝るんだなって

なんかちょっと寂しくなって 布団に潜ったけど

結局君の髪の匂いがした

結局君の髪の匂いがした



一人、のつもりで 夜を泳いでる

一時前 携帯もならない夜は

話そう



あの頃のバンドと

二つ目のバイトと

君の匂いの残るまくらと

昨日見逃したドラマの最終回と

嫌いだったあいつに

久々にあったんだ

変わらない人 変わらない物と 出来事

それでいい



パワーコードが響く夜に