本「アカペラ」

アカペラ
著者:山本 文緒
出版社:新潮社
発売日: 2008/07
読後のなつかしい切なさと清々しさは何だろう。
子供の頃ひとりぼっちの河原で大きな夕日を見たことを思い出した。
そのときの言葉にならない心持ちに似ている。
山本文緒さんの小説はこれが初めての経験です。
3つの中編の物語。大人びた女子高生。ダメな38歳の男。虚弱な弟と暮らす中年の女性。
それぞれに人生の岐路となるような「面倒な事」が起こる。
山本文緒はそれをあっさりとした筆で語る。
どんな突飛な事が起こっても、決して日常のリアリティから解離しない。
僕のすぐそこにいる人たちの、嫌もっと近い、僕の知ってるあの人の身に起こっている物語なんだ。
身近な人たちだから、ちょっとした心の動きも、深く、切なく、愛おしい。
アルバムの写真を見るように、何度も読んでみたくなる。
物語が身体に染みこんで思い出になっていく。
登場人物たちがうっすら色づく物語を読むことで、
自分の平凡な生活まで彩り豊かになった感じがする。
山本文緒さんには熱狂的ファンが多くいると聞きます。
哀切と痛切をじわっと感じる不思議な読書体験、
病み付きになるのが解ります。







