風の包装紙に
風のリボンをかけた、
風の小包。
しなやかなリボンの結び目が、
見るまにさらさらとほどけ、
包装紙がひとりでにほぐれる。
中からこぼれたのは、
あざやかな緑に光る風、1ダース。
今年初めての、夏色の風。
風町通信
以上、本書より引用してみた。
この本には
1遍が5、6ページほどしかない
本当に短い
短編小説?が30ほど入っている。
どの作品も美しく、詩を読んでいるような気分になる。
竹下文子という名前には聞き覚えがあり、今回、初めて読んでみたら
その文章の美しさに、深く感動した。
わたしの下手な説明やレビューより
作品の一部を読んでもらった方が
はるかに雄弁だと思い、
最も素敵だと感じた部分を書き写したのだが、どうだろうか?
グッときたポイント
『あざやかな緑に光る風、1ダース。
今年初めての、夏色の風。』
この短い文から
初夏の、涼やかな風🍃を感じたのは
わたしだけではないだろう。
児童から高齢者まで、
広い年齢層に
人気のある作家らしいが、
それも納得できる。
素晴らしい作家と出逢えて
ぷぷぷ( *´艸`)嬉しい♪
こんな人におすすめ
今さらだが、
読書には、いろいろな楽しみ方がある。
ストーリーテラーの傑作を
ジェットコースターに乗ったように
ビュンビュン読み進む!
そういう面白さもある。
その種の面白さが欲しい時は
この本はお門違いだ。
全く役に立たない。
逆に、
開いたページから流れる出る音楽に耳を傾け、作者の世界に浸る・・・
そんなひと時が欲しいなら、この本は向いている。
児童書のような平易な言葉で、
シュワシュワ🫧泡の弾ける炭酸水みたいな
清涼感のある世界に
誘ってくれるはずだ。
最後に、これもまた印象的だった
部分を引用して終わろと思う。
その町へ行くのに特別な切符や旅券はいらない。
その町へは電車に乗っても行けるし、歩いても行ける。
だけどその町は、いったいどこにあるのだろう?
風町。風の町。
(以上、本書、ラストの短編「風町まで」より抜粋)
雨あがりの朝。白いハンカチを洗濯して干しておいたら、お昼まえ、うすいうすい青色にそまって、なんだかそわそわと風にひるがえっていた。
空がハンカチを小さな雲か何かと見間違えて誘いにきたのだ。
空は白いものが好きだから、ハンカチだの枕カバーだの、外に干したときはちゃんととめておかないと持って行かれてしまう、と誰かが教えてくれた。白い便箋など窓辺に広げっぱなしにしていると、知らないうちに透明な空文字でびっしり落書きされていたりする。
(本書前編 風町から > 青い空 より)