ジョルジュ・ドンのこと ~㉙ドンは変換用?ジルロマン(「ベジャール、そしてバレエは続く」にみる) | 病気だらけのブログ

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読み専門でしたが、天才・努力家のダンサーながら過小評価されているジョルジュ・ドンの事を書くために始め、洋楽、マイケルジャクソン、ドストエフスキー、旅行、ユダヤ資本、政治、経済、社会問題などランダムに書いています。

GEOの宅配レンタルが何ヶ月もレンタル中の作品が空いたので、慌ててカートに入れました。早く決済まで行かねば、またこのDVDは借りれなくなると焦りつつ

「ジョルジュドン」でDVDの検索してみたら1つだけ見つかり、「ベジャール、そしてバレエは続く」と言うものでした。

出演者には「ジョルジュ・ドン、ショナ・ミルク」の名前もあったので、ドンが見れる!と思いカートに入れました。

 

すぐにDVDが届き、目的だったDVDより先に真っ先に、ドンのDVDをプレーヤーに入れました。

 

見始めて、違和感。複数の人のインタビューの連続。2009年日本発売ものでした。ジルロマンが作ったものです。

ローザンヌは3年間の年間にして日本円で5億弱くらいの寄付をしている話もあり、ローザンヌも期待している云々。まだこれくらいは良しです)

 

このDVDは観る人のためのものでは無く、

ローザンヌのベジャールバレエ団はジルロマンにベジャール自身が委託して引き継いでいる。ジルロマンは正当なものから譲られたのだと印象づけるのも目的の一つに思いました。

一番の目的は、ベジャール亡き後のローザンヌのベジャール・バレエ団のPRDVDだと思います。趣旨からすれば無料で配布すべきと思いました。

 

ショックだったのは、ベジャールのメッセージで(それが2回にわたってDVDで紹介されるのですが)

インタビュアーがまず、ジルロマンに

「彼(ベジャール)が貴方に残した一番大切なものは?」と聞きます。

すると、ジルロマンは「オフッツ、フッ」と凄い質問と言わんばかりに、息を吸い込み驚いたジェスチャーを暫く見せ「ふー」と息を吹き出し笑顔で困惑したように下を向いて首を何度か振る演技をします。

(白々しい! 用意してあったインタビューでしょうがと一人突っ込み)

そして、ベジャールとジルの写真(自伝Ⅱにもあった)が映し出され

ベジャールの下記の言葉がゆっくり紹介されます。

「この比類無きアーティスト・ジルロマンを心の迷路から引き出すのに何年もかかった。(ベジャールの陶酔的なジルロマン評が入るので、中略)私は時間をかけて彼の資質を理解した。彼が如何に私に近いか悟ったのだ。

私はジルロマンだけを見て自分の作品を上演し守り 所有し続けてきた。ほかの誰でも無い。

今、このバレエ団は彼のものだ」

 

「私はジルロマンだけを見て自分の作品を上演し守り 所有し続けてきた。ほかの誰でも無い。」

 

これ、ドンをはじめバレエ団のダンサーにとても失礼なんですけど。ドンの家族に見てもらいたくない。ドンを体現者として利用してきただけというのは分かってきてはいたけど、こんな言葉を残すとは。

そしてジルロマンはそれを公にしたくてDVDで2回流す。

ベジャールは日和見な人なので、その都度、自分が動かしたいようにするために言葉を発するのか、これが79年からの本心か分からないけれど見たくなかったです。

 

ジルロマンは79年にバレエ団に入りました。ベジャールの自伝に「8年?9年?の間に3回ジルロマンをクビにした」と書かれていました。

一方で「ジルロマンを心の迷路から引き出すのに何年もかかった。」

と述べています。何年も人に働きかける人には見えない。

 

ベジャールがイメージするアダージェットをドンに体現させドンが81年に公演します。その翌年82年にジルロマンが公演でアダージェットを踊っています。アダージェットの引き継ぎはドンの意向のようにベジャールは印象操作する表現をしていますが、若手にすぐに引き継がせたかったのははベジャールの意向でしょう。ドンは指導できるとしたら「ジル」と言っただけではないかと。ドンもまさか翌年にアダージェットをジルが公演するとは思っていなかったと思います。

 

ジルロマンはベジャールの思いを体現できないから、一旦ドンで体現させて、それを見ながらジルロマンがドンから教わって形にしたと言うことでしょう。(ベジャールの思いを言葉で聞いてもそれをダンスで上手く表せるダンサーがいなかったのでは無いかと思います)

ドンを変換器のように利用したように思います。ベジャールは相手をおもんぱかることはしないのでしょうか。よく言えば翻訳として活用したというのか。

アダージェットだけでなく次々同じ事が起きます。

ライト、恋する兵士、魔笛・・・全てそうです。

まずドンに踊らせ、若手がドンにそっくりに踊らせる。

 

ジルロマンはドンが好きじゃ無かったのかもしれません。DVDにドンへの敬意もドンへの言葉も一言もありませんでした。

ドンの映像がかなり短かく流れただけでした。ベジャールバレエの歴史の長さを表すために挿入されただけです。パオロの静止画も挿入されていました。歴史の1ページという事で。

 

ローザンヌバレエ団のダンサーが「恋する兵士」を踊り(とても下手)、途中ドンに画面が切り替わりあっという間に終わります。

短かったのですが、ドンに切り替わったら、同じダンスなのに全く別物に見えて、以前紹介した動画と同じ「恋する兵士」ですが画面が大きいせいか泣けました。ドンの踊りは何かが違う。

 

ボレロも短い部分でドンが少し映りました。ここで紹介したことがある顔アップのものです。(お気に入りです)

 

見新しい動画では無かったのは残念です。

しかも何秒かの登場のみ。

 

ジルは自分とドンを比較させられるような動画は使いませんでした。

自分のアダージェットのみを所々入れていました。

 

DVDの始まりはジルロマンのアダージェットで、

ジルロマンがベジャールバレエを引き継ぐ努力と闘いも随所に入れられています。

 

後に映画口コミで見たら

「なんかなんか、バレエ団関係者が次々と発言する、インタビュー形式?あと舞台のメイキング?マイケル・ジャクソンの映画と同じかんじ。」

とありました。マイケルジャクソンの映画というのは「THIS IS IT」の事だと思います。

 

このDVDはベジャールは凄い人、その人の残したバレエ団を継続させ続けなければならない。ベジャールはジルロマンに自ら託した。と言う訴えも一つの目的にあるPRDVDだと思いますが。

ジルロマンにもこのDVDでドンは利用された感じです。

ドンが見たくて買ってしまった人もいるかもしれません。

 

口コミに

「やっぱりドンのボレロが最高」とか「ドンの恋する兵士が見れて幸せ」というものがありました。

1分に満たない映像なのに、出演にジョルジュドンの名前だけ入れられています。

 

ベジャールはドンには「ドンのために作った、愛してる」と言っていたのでしょうが

ジルロマンには「ジルロマンのために」と

ジュリアン、ガスカール他、多くの人に「特別だ、愛してる」と言っていたんだろうと思います。

 

ジルロマンにも毎日会うのにベジャールは100通を超える手紙を渡していたと、ベジャールの相手を掴む攻略法なんでしょうか。

ドンにも書いていたと自伝で言っています。